洒落怖

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皆が狂人侍の姿に恐れおののく中で、武石衛門は先頭を切って畳石に近づいていった
そして何とか火縄銃が届く距離まで近づいた武石衛門は、静かに火縄銃を構えると、引き金を絞った

「誰か! 無礼な!」

狂人侍が発したのはその一言だけだったという。武石衛門が放った銃弾は一発で侍に命中し、
侍は仰向けによろけると、そのまま倒れて動かなくなった

勝鬨の声を上げて狂人侍に近づくと、全員が絶句してしまった。見れば、この侍は天を衝くような大男で、
筋骨隆々の体はすでに人間の域のそれではなかったという。彼は山から山へ逃げるうちに、
いつしか完全に人間ではなくなっていてしまったのだろう

670 4/4 2009/12/06(日) 18:29:45 ID:weD806cX0
ともかく、この悪鬼を討ち取った武石衛門は、このことをすぐさま南部公に報告し、山狩りは終了した

この狂人侍はさすがに罪を重ねすぎていたためか、家中の墓に葬られるわけには行かなかったらしく、
農民たちの手によって、日陰というところの山の麓に手厚く葬られた
この侍の供養碑には『忠山了儀居士』と記された。正気を失った武士への、せめてもの手向けであった

後に、住民たちはこの侍のために念仏塔を拵え、この侍の冥福を祈願した
この念仏塔とは車仏というもので、卒塔婆に車輪がついたもので、これをクルクル回して個人の速やかな
輪廻転生を祈願するものである。人々は折々、この車仏の車輪を回して、侍の霊を手厚く弔った

この侍の霊は、現在も近隣住民によってお盆に供養されているという
この侍の墓も残っているが、風雨で風化したのか、『忠山了儀居士』の文字を読み取ることはできない

書き方のせいで創作っぽくなったが、一応我が町の正真正銘の歴史だ
このスレの本義からは離れるかも知れんが、一応本当に歴史に登場した鬼ということで書いて見たわ
人間が鬼になるというのは割かしこういう理由からなのかも知れん

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