洒落怖
飛び込み事故

この怖い話は約 4 分で読めます。

602 KO4 sage New! 2009/08/08(土) 01:59:32 ID:2JWKHrPf0
家に帰ると、リビングでテレビを見ていた嫁さんが俺を見るなりハッとした顔をした。
「何?びっくりしたような顔をして」と俺が言うと
嫁さんはちょっと間を空けたあと
「・・・いや、今日は早いなって」とあわてて返してきた。
「帰るってメールしただろ・・・」そこまで言って俺は押し黙った。
ああ、こいつ何かを感じてるんだな、それとも何か見えるのか。
嫁さんは俺とは違い、本人曰く霊感が強い、らしい。これまで色んな体験談を聞かされてきた。それは本人からすれば、至極本気なんだろうけど、俺はいつも、はいはいって感じで受け流していた。
だけど今日は・・・さっきの電車の件を話してみようか・・・。いや、やめとこう。面倒くさい。それより疲れた。早く眠りたい。
俺はシャワーを浴び、ビールを飲み、用意された食事もそこそこにベッドに潜り込んだ。
嫁さんに見つかって変に話が展開しないように、切れた数珠をタンスの引き出しの奥に隠すのを忘れずに。

604 KO5 sage New! 2009/08/08(土) 02:03:55 ID:2JWKHrPf0
翌日からまた仕事に追われた。電車の件は俺の頭の中からすっかり忘れ去られていた。
2週間過ぎた金曜、その日をもって仕事も落ち着き、打ち上げを兼ね課の同僚達と飲みに行くことになった。
会社を出て居酒屋に向かう途中に嫁さんの携帯に電話した。
「今日、会社で飲み会になったからメシいらない」
「あ、そう。それより数珠のことなんだけど・・・」
嫁さんはあの数珠を見つけたんだ。同時に俺は忘れていたあの電車のことを思い出した。
「いや、紐が切れたんで引き出しに入れておいたんだわ。ゴミ箱に捨てちゃまずいだろ、ああいうもんは。どっかの寺とかで燃やしてもらったほうがいいと思って保管しておいた」
俺は嫁さんに霊感を発揮してもらいたくなかった。そのため口をつく言葉にまかせた。
「引き出し?・・・・ポストでしょ、下の郵便ポスト。今朝家出るとき入れたんでしょ?」
「は?」俺は訳が分からなくなった。
「そんなことより、聞いてくれる」
嫁さんの声は切羽詰っている。
「夕刊取りにポスト開けたら数珠があったんだけど、あの数珠の珠、ひとつひとつが真っ赤な血だらけの男の顔になって・・・・」
その続きの言葉は目の前を走る改造したバイクの轟音でかき消された。
「おまえ何言ってんの?帰ったら聞くからもう切るぞ。」
やめてくれ、やめて欲しい。俺は携帯の電源そのものをOFFにした。

605 KO6 sage New! 2009/08/08(土) 02:12:50 ID:2JWKHrPf0
「○○さん、何かあったんすか?」
飲み会の居酒屋で生中ジョッキ片手に一人の後輩が俺に聞いてきた。
「別に?何で?」
「いや、さっきから暗いし」
「そんなことないよ、ハードワークで疲れてるだけだわ」
正直、嫁さんのことが心配になっていた。早く家に帰らなきゃ。タンスの引き出しに確かに入れた数珠がポストに入ってた?その数珠の珠が血だらけの顔?あの電車で思い浮かんだ男か?
「そうですよ、○○さん働きすぎですよ、もういい年なんですから」
後輩社員が返してきた。
「うるせーな おまえらと5歳も違わんぞ」
「5歳の違いは大きいっすよwww 」
「ところで山口遅いな、何か連絡あったか」
3日間徹夜をして今日代休をとっていた同じ課の山口を今日この居酒屋に呼び出していた。でも大幅な遅刻。飲み会が始まって1時間たってもまだ来ない。
「いえ、遅れるって連絡はありません。さっき電話したんですけど電波つながらなくて。けど、さっきネット見たら人身事故かなんかでJR線動いてないみたいです」
「人身?」一瞬俺は鳥肌がたった・・・気がした。
「ええ・・・それより追加注文していいすか・・・○○さんのおごりで・・・てか会社の経費で落としてくださいよ・・・こんなに決算頑張ったんですから」
「ああ、いいよ、何でも頼め。今日は交際費で落としとくわ」俺は元気なく答えた。
後輩は俺の顔を見つめ一瞬ニャって顔をした・・・気がした。
うっ・・・お、おまえ・・・まさか・・・『チャーハンのロック』とか言うなよ・・・。
「すんませーん!チャーハンの・・・」
そのとき目の前がぐるぐると回り、景色がかすんだ・・・。

この怖い話にコメントする

飛び込み事故