洒落怖
坊主や神主は特別な力を持っている

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その日の夜。俺はじいさんに昼間のことを聞こうとしたんだが結局はぐらかされてしまったよ。その日は諦めて床についたんだ。

スッ、シュ、ズザッ。ザー。

明け方、だったと思う。不思議な音を聞いた(気がしただけかもしれん)。

目覚めてしまった俺は、何とはなしに廊下の方に目をやると何かが動いている。
黒い。
寺の廊下はただでさえ暗いのだが、闇よりも黒い何かが動いている。
黒い塊がもぞもぞしていると思ったら、急に廊下の右隅から左隅へとそれは移動を始める。

寺の広い部屋で雑魚寝をしていたんだが、開けている障子の越しに、そいつが移動しているのが見える。
伝わるかな?「まとめた障子→□■□■←そいつ」
みたいな感じで障子の隙間を段々と左に移動してるんだ。

そいつはでかい蛇のようで、ビビッた俺は目を閉じた。
覚えたての般若心経を心の中で必死に唱え、布団の中で丸くなったんだ。
どのくらいそうしていたか解らない。ただ、不思議な音は暫く続いていた。

次の日、その出来事が夢なのか現実なのかも解らないまま俺は行に入った。
その日は本当に集中できなかったな。
何となく嫌な汗をかくし、体が重いんだ。
その日の修行も終わりに近付いた頃、例のエロじじいがお寺の一番偉い坊さんと何かをしゃべっている。

そしてじじいが俺の方に来て一言。

「ワシとちょっと来なさい」

3度目のへ?だ。
何故か俺はじいさんに連れられて本体とは別行動になってしまった。
ヤツに連れて行かれたのは1時間程歩いたところにある小さな小さな神社だった。

「勤行」
と真面目な声で命じるじいさん。

訳が分からないままお経を唱える俺。

ちなみに神社でお経って奇妙に思えるかもしれないが、
神仏習合っていってさ、日本の山岳宗教なんかじゃ割とよくあることだそうだ。

お経が終わると静かにこっちを向くじいさん。
「ここ、何を祀っているかわかるかな」
首を振る俺を見て、
「ま、しっかり挨拶をしたんだ。大丈夫だろ。帰るぞ!」
とのこと。それ以降何を聞いても、「今日の飯はなんだろうな」などと相変わらず答えてくれない。

その日、どうしても納得のいかない俺は、寺で一番偉い坊さんに直接話をしにいったんだ。
あのじいさんは何なんだ。と。

ゆっくり坊さんが口を開いた。
「正直、私には見えない世界のことはわからない。センスが無いんだよ」

「でもね、中には霊感っていうのかな。目に見えないものが見える人も中にはいるようなんだな。
時々そういう相談もくるんだよ、坊さんをやってるとね。でね、○○さん(じいさんな)は見える人みたいなんだ」

「今日、○○さんと神社行ったろ。○○さんが、君にそこの神さんに挨拶をさせろというんだ。俺君、杖折れただろ。修行中に。
それも神さんからのメッセージだって○○さんがいうんだ」

ずっ、と坊さんがお茶をすする。

「あの神社な、黒龍さんが祀られてる。まぁ、今でいう大蛇だな」

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