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後ろから飛来した何かに打たれた。
多分ボールのようなものだったのだろう。
影が一瞬止まった隙に私は抱えられる様にして引っ張られ、そのまま走りだした。
普段から鍛えているのだが、悔しい事にこの時はVの方が足が動いていた。
まろぶようにしか進めない私を、殆ど右手だけで引き摺っていく。
「うしろみるな。」
背筋の冷や汗のまま、振り向いてしまった。よせばよかった。やはり、ついてきている。
両手を前にだらりとおろして、俯いて滑るように疾走する姿は、まさしく幽霊。
白く無い事に違和感があるくらいだ。「ひっ」という声がでた。
瞬間、飛んだ。
785 本当にあった怖い名無し 2011/07/02(土) 01:52:20.30 ID:LMdrtnMj0
がりり、という嫌な音を立てて私はVと一緒に倒れ込んだ。
アスファルトの床は思ったより固かったが、2,3回転がったためか然程痛くはなかった。
「ほらっ、見ろよ、これはみものだっ!!!」
突然Vが絶叫した。弾かれた様に顔を上げると、同時に、甲高い音が響いた。
クァーン。
電車の通過音。ヤバイ、と思って慌てて顔を伏せるが、遅かった。
滑るように来ていた黒が、横殴りに大きく跳ね飛ばされた。
顔は見えなかったが、苦しげに歪んでいた様に思う。そのまま走り去る電車。
「あははははははははははははははははははははははははははは!」
狂ったように笑うV。だが、何を思ったか唐突に黙り、難しい顔になった。
そのまま線路へと歩いて行く。当然、そこにあるのは。
「困ったなあ。こんなになるとは。」
かろうじて上体を起こした私からも見えた。真っ二つだ。嫌な事に、縦に。
咄嗟に「警察を呼んだ方がいいんじゃないか」という事を口走る。
この黒服は幽霊じゃない。こうして死んでいるではないか。
だが、Vはまるで言葉の意味が分からないとばかりに首を振る。
「なんて説明するんだよ。幽霊に幽霊が轢かれました、か?」
ゾクリ。
そうだ。遮断機は下りていたか?警報機の音はしたか?列車のライトは?
そして。大きく跳ね飛ばされた男の死体が、何故上体を起こしただけの私に見えるのだ?
「退治したかったのはあっちだったんだがな。コイツじゃ弱すぎた。」
Vが無感情にそう言い放った。