何でも怖い

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やがて一同は両脇に分かれて座ります。
そして一斉に拍手をします。
すると正面のふすまが開き、紋付袴の花婿らしき人が入ってきます。
その顔はわかりません。なぜなら黒い頭巾で頭部全体を覆っているからです。

花婿が私の横の席にすわります。すると獣臭さがわっと襲いかかるように鼻につきます。花婿が私の手をとります。お婿さんの手には茶色いごわごわした毛が生えています。そうしてもう一方の手で自分の黒い頭巾を上に引っ張ります。紋付の肩に茶色い毛の束が広がります。

頭巾をすっかりとってしまうと、そこにあるのは何とも種類の判別しない動物の頭です。しかも両目がありません。

私は絶叫しました。

498 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/07(木) 17:52:53.73 ID:HSLKAHpZ0

そして目が覚めました。枕元の時計を見るとまだ2時過ぎです。とりあえず夢とわかってほっとしたところでしたが、すぐに部屋の中が夢と同じに獣臭いことに気がつきました。何かがいる気配がします。それも一匹や二匹ではありません。

大きなもの、小さなもの、羽ばたくもの、這うもの、あらゆる獣が私の布団を取り囲んでいます。少しでも動けば襲いかかってきそうに思えます。部屋の中は真っ暗ではありません。電気製品や時計のわずかな灯りで見た目には何もいないのです。
それでも尋常ではない殺気のために身動き一つできません。
そうして何時間が過ぎたでしょうか。カーテン
ごしに朝日が当たっているのがわかります。
すると一つまた一つと小さなうなり声を残して、それらの獣の気配は部屋の南側、押し入れのあるほうに吸い込まれるように消えて行ったのです。

どれくらい布団をかぶっていたでしょうか。
光が差し込んだ部屋の中はすっかり朝の雰囲気となり、昨夜のことはどこまでが夢でどこまでが事実だったのかわからないような心持ちになりました。おそるおそる時計を見るとまだ6時半を過ぎたばかりです。

私は起き上がり、昨夜の獣たちが消えて行った押し入れの前にいき戸を開けました。そこには昨日私が入れた段ボール箱とわずかの寝具があるだけでしたが、突き当たりの板を押してみるとなんだかごわごわします。後ろになにか柔らかいものがあってそれに板が当たっているような感触なのです。そこで押すのをやめ、てのひら全体をあてて横にずらそうと試みました。

するとそれほどの力ではないのに板が大きく動きました。

・・・そこに見たものは十数体の動物たちの剥製でした。毛のある生き物ばかりではありません。
私は夢の中のように大きく悲鳴をあげて、パジャマのまま部屋の外に飛び出しました。
離れの外に出ると、少し離れたところに大家さん夫妻が立っていました。夢で見たとおりの喪服姿でした。ご主人が口を開き
「あなたなら息子の嫁にふさわしいかと思ったのに残念だ・・・。」奥さんが「杯を交わすまであと少しだったのに・・・」
さも心惜しそうにつけ加えます。私はそのまま家の門を走り抜け大通りに出ました。そしてその日一日を大勢の人に紛れて駅で過ごしたのです。

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