何でも怖い
父と娘

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その娘の葬儀は先生が費用を賄って行われ、母親が眠る墓に埋葬された。
葬儀の最中、あるいは父親が姿を見せるのでは、といういちるの望みも叶わなかった。
母親は娘を産んで1年位後に、風邪をこじらせて亡くなっていた。
先生は一度父親を殴った事がある。妻が病に臥せている事を先生に黙っていたからだ。

「出産の時も、娘が熱出した時も金払わんかったから、言えんかった。」
涙を流しながら話す父親を、先生は思いきりぶん殴った。
「金なんか要らん言うたやろうが!」
先生も看護婦も涙が涸れるまで父親と抱き合って泣いた。「ふんぎゃー」傍らでスヤスヤ眠っていた筈のM子までが3人に加わった。
看護婦はその時、心から思ったという。
(犬神憑きなんて嘘っぱち!みんな良い人ばかりじゃないか!)

何事も起こらずひと月が過ぎた。失踪した父親の事もあまり話題にならなくなる。そんなある日、ある家から医院に電話が掛かってきた。5歳になる長男が泡を吹いて倒れたという。
先生が看護婦と駆けつけた時には、既に男の子は呼吸をしていなかった。心臓マッサージを試みようとした2人は、白目を剥いて倒れている子供の身体に触れ、異変に気づいた。
既に死後硬直が始まっていたのだ。
!!!
先生と看護婦は声を失った。

顔がみるみる土色に変わっていく!

(あり得ない!)
先生は子供の服を脱がせてさらに驚いた。痩せ細ってあばら骨が浮いた身体は干からびたように水気がなく、とても死んだばかりのものとは思えなかった。

91 : 本当にあった怖い名無し : 2012/02/24(金) 22:49:58.13 ID:AVSsPknX0
先生は子供の身体を裏返してみる。
(・・・)そこにいる全員が凍りついた。
背中に紫色の痣があった。皆、口には出さなかったが文字に見えた。
僕の母は言う。
「あれはどう見ても、美、だった。死んだ娘、名前が美○子だったから、さすがにぞっとしてね」
時折、奥の間から咆哮としか言いようのない声が響いてくる。亡くなった長男にとっては祖母にあたる、Iさんが号泣しているのだ。
看護婦は子供の父親を見た。先程から何やら、ぶつぶつぶつぶつ呟いている。何を言っているのか全く聞き取れない。

側に座る母親はもはや放心状態だ。目の焦点が合っていない。
突然父親が、家が揺れるかという程の大声で叫んだ。「○○○○○!!」(聞き取れなかったらしい)
そして座った格好のまま横に倒れ込んだ。

先生が父親に駆け寄り何か叫んでいる。看護婦はその時、先生が自分を呼んでいるのが分かってはいたが、パクパクさせている先生の口をただ見ているだけで、何を言っているのか全く聞こえず、身体も動かなかったという。
ふと、傍らに横たわる死体を何気なく見た。
背中から何かが出ている。黒い煙のようなもの、いや煙というよりはもっと質感を伴った、黒い綿菓子といった感じのものが出ていた。

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