後味の悪い話
小松左京の短編小説 『石』

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361 : 3/3 : 2009/08/25(火) 17:40:54 ID:WtkufTqV0
毎夜の恐怖と懊悩に耐え、数ヶ月後和子は良夫を旅行に誘う。
「ハネムーンだね」と大喜びする息子を連れ、以前行ったことのある山奥の湖畔のホテルに宿泊する
翌日良夫を巧みにボートに誘い、ホテルからも見えない湖の真ん中辺りまでくると和子は力いっぱい
良夫を突き飛ばした。たちまち溺れる良夫、万能に見える彼にもすぐには出来ないことがあったのだ
良夫は自転車に乗れるようになるのに二日かかった、彼はまだ泳ぎを教わっていなかった。
湖深く沈んでいく息子を見届け岸まで戻ると大声で助けを呼び半狂乱に泣きながら悲劇の母を演じた
周りは誰も疑わず、同情を寄せた。ふと和子は気付くとあの石を握っていた、良夫が落ちる寸前ボートに
落したのを無意識に拾っていたらしい。
悪魔の様な息子から解放され安堵したのもつかの間、和子は体の不調を覚え病院に行くと医者から
「おめでとうございます、四か月ですよ」と告げられる
夫が失踪したのは七か月前のことだ、ならば信じがたいが相手は一人しかいない…
すぐさま堕胎を願い出る、麻酔で朦朧とする中周囲で混乱と恐怖の悲鳴が上がるのを聞いた。
そして目覚めると、異様な雰囲気の中数人の医者が狼狽しながら何かを説明しようとしていた
その時部屋の外が騒がしくなり、悲鳴や誰かが失神して倒れる音などが聞こえた
部屋のドアが開き入ってきた小さな白い生き物が二本足で立ち上がると和子を指さしキイキイ声を張り上げた
「こいつだよ!この女がボクのパパを殺したんだ」
四か月で生まれてきたしわくちゃの赤ん坊は驚くほど良夫に似た顔で歯をむき出しにしてニヤリと笑った。

そして今和子は殺人容疑で裁かれていた。子供を殺した容疑でなく夫を殺した容疑で。
彼女が持ち帰ったあの石にわずかに血液が付着していたのだった。それは夫のものと確認され
発見された夫の遺体の頭がい骨に空いた穴と石の尖った部分が一致したのだ。
今日も傍聴席のどこかで、この様子を歯をむき出して笑っているあの顔を意識しながら和子はぼんやり考える
『こんなになってしまっても、発狂することも出来ないのは、私もあの石の放射能に当たったせいかしら・・・』

362 : 本当にあった怖い名無し : 2009/08/25(火) 17:46:10 ID:MGwrXGpR]
>>359
面白かった乙

363 : 本当にあった怖い名無し : 2009/08/25(火) 19:00:34 ID:9Q3nMTWVO
>>359
ギャグすれすれなのに怖ェエ

364 : 本当にあった怖い名無し : 2009/08/25(火) 19:51:54 ID:gGlzPfCz0
>>359
おもしろかった
>思い余って何回か自殺を図ってもそのたび蘇生させられてしまう。
良夫天才すぎるだろw

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小松左京の短編小説 『石』