洒落怖
故障だね

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しかしここでまた妙なことが起こりました。
春先の夜はまだ寒く、車のエアコンは暖房にしていたのですが、なぜか冷風しか出なくなってしまったのです。
「故障だね・・・」
「・・・・そうだね」
もはやそう言い続けるしかありませんでした。
やっとのことで宿に戻り、気が進まないながらも、さっきの映像を確認してみました。
確かにO君が写っています。こちらを向いて、身振り手振りを入れながらなにかを説明しています。
しかし、聞き取れません。音声が殆ど入っておらず、たまにザッとかジッとかいう妙な雑音が入る程度です。
そして映像の方も、デジカム特有のブロックノイズが大量に載り、とても見れたものではありませんでした。
「あー、もう絶対故障だよ。こりゃ明日からは写真だけになっちゃうな。じゃ、もう遅いから寝よう。」
無理矢理出した大声で促すO君に従い、その日はそのまま寝ることにしました。
そして翌日、予想通り、カメラはすっかり直っていました。全員が心の中で”やっぱりな”とつぶやいたはずです。
そのまま数日の行程を終え、すべてとは行かないまでもかなりの数のお寺を回って、我々は無事帰宅することが出来ました。

それから数ヶ月が経ち、久しぶりに会ったU君と、この時の話になりました。
さすがに時間も経っていたので、笑い話として話していたのですが、途中からU君が急に神妙な顔つきになり、
「実はさ、あんときの事であやまらなきゃいけない事があるんだ」
と切り出してきました。なんのことかわからず、私が聞いていると、
「あん時さ、カメラ止まったじゃん。それでおかしーな、ってんで、車戻って確認したでしょ」
「うん、なんにも写ってなかったんだよね」
「それがさ・・・ごめん、ホントは写ってたんだわ」
凍りつく私を前に、U君は語りだしました。
「あん時さ、車ん中で確認したら、ちゃんとOが写ってたんだよ。で、なんだ壊れて無いじゃん、て言おうとしたんだけど、よく見ると変なもんが写っててさ」
「・・・・なに?」
「”手”、なんだよ」
「うっそ・・・どんなの?」
「なんかOの足元にさ、白っぽい手だけが、まとわりつくみたいに動いててさ。カメラのモニタだしぼんやりしてるんだけど、明らかに手なんだよ。
 でさ、俺、これは絶対ヤバい、と思ってさ。すぐその場で消去して、なんも写ってなかった、って言っちゃったの」
私はただ呆然と聞き入るしかありませんでした。
「Oって特にこういうの気にするしさ。せっかく四国まで言ったのに、なんか雰囲気悪くなるのも嫌だったし、今まで黙ってたんだよ。ごめん。
 あ、あとこの事Oには黙っとこうな。あいつマジでこういうのダメだから」
というわけで、O君はこの事を知りません。
映像を見たのもU君のみで、私に真相を知る方法は無いのですが、私の中の怖い話ランキングでは最上位です。
長文失礼しました。

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