洒落怖
帰れない

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斎藤さんは白目をむいていた。
そして、逆に黒目いっぱいの『そいつ』を引きずっていた。
『そいつ』には足らしきものはなく、上半身のみ。髪の毛が長くて、斎藤さんがそれを掴んで引きずってる。
「ア、イタヨ」
『そいつ』に見つかった。
「アタカミ?ちゃん行くよ」
斎藤さんがすごい速さで走ってきた。

955 本当にあった怖い名無し New! 2014/02/19(水) 18:13:30.87 ID:UVkn4pYzI
気づけば俺は診療所の出入り口に向かって走っていた。
人間って危機を感じると考えなくても体が動くんだな。

後ろを振り向く余裕なんかなかった。
今すぐここから出たかった。
はぁ…はぁ…はぁ…
なんとか診療所から出た。

絶望だった。

956 本当にあった怖い名無し New! 2014/02/19(水) 18:19:28.90 ID:UVkn4pYzI
そこらじゅうに『そいつ』がいた。
車に乗る余裕なんてなかった。
泣きながら俺は山林に逃げ込んだ。

今思えば、『そいつ』たちは自らは動けなかったのかもしれない。
10分ほどして、我に返った。
ここどこだ?
家はどっち方面だ?

957 本当にあった怖い名無し New! 2014/02/19(水) 18:27:58.39 ID:UVkn4pYzI
…クレヨ…
遠くで叫んでいる。
少なくとも、今は身に危害はないみたいだ。

少し落ち着いてから、俺はとにかくふもとへ下り始めた。
しばらくすると、小さな集落が見えてきた。
よし。助けてもらおう。
ドンドンドン 誰かいらっしゃいませんか~?
誰か~?

そういえば今何時だ?
時計は外したままだった。
こんな時間に起きてる人はそうそういないだろう。

958 本当にあった怖い名無し New! 2014/02/19(水) 18:36:55.93 ID:UVkn4pYzI
諦めて違うところへ行ってみよう
そう決心した時、
「ア、イタヨ」
え?

さっきまで叩いていた家の入り口から村人らしきひとが白目をむいて、手には『そいつ』を持っていた。

俺は自分がおかしくなるんじゃないかと思う位泣き叫びながらまた山林に逃げ込んだ。多分そう。

気づいた時、俺は木に寄りかかって寝ていた。
太陽のひかりが差し込んでいた。

959 本当にあった怖い名無し New! 2014/02/19(水) 18:45:11.65 ID:UVkn4pYzI
夢なんだ。俺は夢遊病か何かでここにいるんだ。
自分にそう言い聞かせながら立ち上がった。
しかし、流石に診療所に戻る気は起きず、車は捨てる決心でとにかく下ろう、
そう思って辺りを見まわした。

斎藤さんがいた。

斎藤さんがニコニコしながら上の方から
「そんなとこで何してるんだ?」
「う、うわぁぁぁぁぁぁ」

気づけば俺は大学病院のベッドで寝ていた。

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