この怖い話は約 3 分で読めます。
黒尽くめの男が陰気な声で言って、手元の鞄を開けると札束を取り出した。
「はい。直ちに作りますので、少々お待ちくださいーー。ほら君早くして!!」
ご機嫌なった所長に言われて私は渋々このバカな話に付き合った。
書類を作り奴にサインを求める。
奴め、手まで真っ黒だ。
妙な筆跡で読みづらいが名は『Nyaru・hotep』とか言うらしい。
手続きが終わると、
「では、邪魔したな。これから引越しの準備があるのでこれで失礼する・・・」
そいつは事務所から出て行った。
「所長、おかしいですよ。どう考えても。変な犯罪に巻き込まれたらどうするんです」
「変でも変でなくてもいいんだ。金を払ってくれるんだから別にいいじゃないか。無い部屋を借りようなんてよく分からんが、まあ世の中にはいろんな人がいてもいいだろう」
「でも引越しとかいってましたよ。どっかの部屋に無理やり住み込まれたらどうするんです」
「そうしたら追い出すだけさ。貸したのはあくまでも404号室だ。404号室ならいいが、それ以外はだめだ」
それから、一週間後。
退去者がでるので、件の貸しビルへ明渡と現状の確認に訪れた。
一週間前のことを思い出して、4階の様子もみてみようと思ってエレベータで4階に行くと・・
そこには404号室があった。
大方、例の奴がどこかの部屋に無理やり住み着いて、部屋のプレートを書き換えてるんだろう。
所長め、やっぱり厄介なことになったじゃないか。
ベルを鳴らすと真っ黒の奴が部屋の中から現れた。
「ああ、この間の方か・・・何か用かな?」
「おい、あんた何をやってるんだ。借りるのは404号室をと言う契約のはずだぞ」
「見ての通り。404号室だが。何かおかしなことでも?」
すっとぼけてやがる。
「ふざけるなよ。そういうことをすると警察の厄介になるぞ。早く荷物をまとめてでていけ」
「残念ながら、君の考えているようなことはしていない。よく確認して見たまえ」
私は4階の部屋の数を数えた。
見取り図では401から405まである。
そのうち404号室は存在していないわけだから4部屋あるわけだ。
部屋が4つだからドアも4つ。
単純な計算だ。
しかし、ドアはなぜだか5つあった。
「そういうわけだから、お引取り願おうか・・・」
奴にバタンとドアを閉められたが、こっちはどうしても納得がいかない。
やけになって他の全ての部屋にあたってみることにした。
401号室の住人
「え、404号室はなかったんじゃなかっったって?んーそういえばそんな気もするけど、今あるってことは最初からあったんだろう」
402号室の住人
「404号室ですか。確かに最初はありませんでしたよ。いつのまにか出来て人が住んでるみたいですね。ちょっと変だけどまあ、特にこっちに迷惑がかかるわけでもないし・・・」
403号室の住人
「お隣さん?引越しの時に挨拶したけど別に普通だったよ」