時間・空間
廃屋と獣道

この怖い話は約 3 分で読めます。

その時のことを思い出し笑いしながら不気味さを紛らわせて進んでいくと、
集団墓地を通り過ぎて、廃屋の前に出た。どうやらそこで行き止まりの様だ。
いや、よく見ると先の藪の中に獣道のようなものがあるが、まさかそこを歩けとか
馬鹿なことをナビが言うわけないだろうな……と思って改めて廃屋の方を見る。
木造で、昭和中期、と言うより何か大正時代を思い浮かべるような造りだった。

801 : 忍法帖【Lv=19,xxxPT】(3+0:3) [sage] : 投稿日:2013/01/15 10:53:28 ID:R/dzEihY0
これが駅舎なわけないだろー、線路だってないし……と思いつつその廃屋を
しげしげと眺めた直後、全身に猛烈な寒気が走った。別に廃屋内に何かが見えた
わけでもないし、そもそも俺零感だしオバケとか信じてなかった。でも寒気と
言うか悪寒と言うか、なんかここにいたらヤバい!って頭が自動的に判断して、
元来た道を猛ダッシュで走った。走ったと言うより、足が勝手に走っていく感じ。
道中河原を通過する場所があった筈だが、まるで記憶にない。ふっと気付くと、
大通りが横切る十字路に出ていた。三人組が曲がっていった、あの道だ。

もういくら携帯ナビとは言えこんな怖いところは散々だ、大通りを歩いて帰る!
と、大通りを進みながらこのクソナビめ、と携帯を取り出したところ、
電源が切れていた。電源を入れるとお馴染みの電池切れのマークが。
残り3時間くらいあったはずのバッテリー残量はどこに消えたのか……。

それからは案内標識に従って特に迷うことはなく駅に到着した。決して新しい
駅舎では無かったが、ごく平凡な感じで、始発が近いのか明かりもついていた。
程なくして始発列車が到着し、そして無事に帰宅することができた。

802 : 忍法帖【Lv=19,xxxPT】(1+2:3) [age] : 投稿日:2013/01/15 11:15:53 ID:R/dzEihY0
ちなみに翌週の朝、別件で偶々同じ場所を通過することがあったのだが、そこは
どう見ても丁字道路で、川沿いの先は深い藪と森に包まれて到底人の通れるような
状態ではなかった。んな馬鹿なと思い、近くに車を止めその辺を観察してみたが、
木々の形を見ても明らかに植林っぽくないし、半月であの荒地がこんな森になるとか
どう考えてもあり得ない。あの時俺が進もうとした藪の中にボロボロに錆び果てた
金属製の立て看板が転がっていて、ひっくり返すと「この森で絶対に遊ぶな」と
書かれてあった。その時ふと気付いてあの時のスマホを取り出しナビを起動すると、
ルート候補は何度リルートしても3人が進んだ大通り経由の道しか出てこなかった。

あの廃屋や獣道は何だったのか、さらに先を進んでいたら俺はどうなっていたのか、
それは結局解らず仕舞いだった。ただその年の初詣で普段と違っていたのは、
神社の場所だけではなく、今年が本厄年で、念のためお守りを買っていたことだ。
あの時の寒気はお守りの警告だったのかもしれない、と勝手に思い込んでいる。
今も森の先に件の廃屋があるのかもしれないが、探しに行く勇気は俺にはない。

この怖い話にコメントする

廃屋と獣道
関連ワード