この怖い話は約 3 分で読めます。
その子供は村の水番が、妹との間につくった子供で
(本当かどうかはわかりませんが、
水車小屋のような場所があったので
すぐそういう、性的な噂が立てられた)
水番が罪を犯すと翌年は日照りになるという
迷信がまだ残っていました。
水番は責任感が強かったので、
子供を殺して村に詫びようとしたそうです。
588 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:47
実際「子供を殺せ」と書いた無記名の手紙を投げ入れる
ような嫌がらせが、すぐ始まったそうです。
水番に不利に扱われていた家も多かったし、
実際、穀物の管理責任は水番にあるので、
そういうのがおきても仕方ない状況ではあったそうです。
年明けて、一月二十八日の深夜、
いくら何でも水番が自分の息子を殺すのを容認は
できませんので、このことは村全体で考えよう、
と談判していたところだったのですが、
水番の妻が泣きながら世話役の家に走りこんで来て、
亭主が首を括ったので来てくれ、と言うのです。
589 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:48
水番の家に行くと、井戸の上に「井」の字に竹を渡して、
そこから首を吊るすようにして絶命している水番がいました。
あまりの酷さに世話役たちが顔を背けていると、
くだんの息子が、傍らから、世話役の袖を引いて、
「みましたか! みましたか!」
と、目をらんらんと輝かせて尋ねるのだそうです。
この子はもはや正気ではないとはわかっていました。
が、当時の解釈では、
これは、水番の相反する気持ちが、
子の魂は滅ぼしても子の肉体は母のために
生かしておいてやりたい、という願いになり、
親子の魂が入れ替わったのだ、というのが支配的でした。
間引きのために子供を殺したことはありませんでしたが、
このとき、村で初めて、
この子供を「殺そう」という結論が出たのだそうです。
591 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:49
横糸を斜めに織った長い綿布で首を包んで、
布に少しずつ水を吸わせて、誰も手をかけないうちに
殺そうということになりました。
しかしそこは、素人考えですので、
首は絞まってもなかなか絶命しません。
子供は父と同じ顔で「誰じゃ、食ったのは誰じゃ」
と声を上げていました。
592 名前:r-chu ◆rPiM0h0rok 投稿日:02/10/15 23:50
恐れおののいた村人は、父が死んだのと同じように、
井戸に竹を渡してそこから子供を吊るしました。
ものすごい形相でにらむので、
まぶたの上から縦に竹串を通しました。
子供は、数日、糞便を垂れ流して暴れたのち、絶命しました。
その明けた年は、飲み水から病気が発生し、
多くの人が命を失いました。
さらに、本当に穀物を食ったのが、この子供ではなく、
世話役の十三になる子供だったことがわかったのだそうです。
このとき、世話役は躊躇なく、
わが子を同じ方法で吊るしたのだそうです。
怖いと言うか、むごいですね。