師匠シリーズ
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444 写真 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:30:45 ID:3rNkYIQb0
それはありえないだろ!
しかし師匠の目は笑っていない。
何かに体内時計を狂わされたとでも言うのだろうか。
師匠は、「今日はここまでにしようか」と言って肩を竦めた。
俺もなんだかよくわからないけれど、自分の家に帰りたかっ
た。
部屋中に散らばった写真を片付けようとして、さっき伏せた
2枚の写真の前で手が止まる。
「同じものが写っている」と言った師匠の言葉も気になるが、
「見ないほうがいい」という第6感が働く。
その時、師匠が妙に嬉しそうな顔をして床の上を見回した。
「人間には無意識下の自己防衛本能ってヤツがあるんだなあ、
と実感するよ」
なにを言い出したんだろう。
「動物園ってなにするところ?」
話が飛びすぎで意味がわからない。
「動物を見に行くところだと思いますけど」
「たしかに、僕らはお金を払って動物園に行き、それぞれの
檻の前に立って中の動物を見て歩く。しかし動物からすると
どうだ。檻の中にいるだけで、色とりどりの服を着たサルた
ちが、頼みもしないのに次々と姿を見せに来る」

445 写真  ラスト ウニ New! 2006/06/03(土) 12:31:58 ID:3rNkYIQb0
動物を心霊写真に置き換えればいいのだろうか。
なんとなく言いたいことが分かってきた。
床を見ながら師匠は独り言のように呟いた。
「闇を覗く者は、等しく闇に覗かれることを畏れなくてはな
らない」
「ニーチェですか?」
「いや、僕だ」
師匠はどこまで本気かわからない顔で、床に散らばった写真を
指差した。
「どうして伏せたんだ」
それを聞いたとき、心臓がドクンと鳴った。
さっきの2枚だけではない。無数の写真の中で、何枚かの写真
が伏せられている。
全く意識はしてなかった。全く意識はしてなかったのだ。
写真はすべて表向いていたはずなのに。
僕が伏せたんだろうか。
寒気がして全身が震えた。
「怪物を倒そうとするものは、自らが怪物になることを畏れな
くてはならない」
やっぱりニーチェじゃないですか。
俺はそう言う気力もなく、怪物を倒すどころか写真をめくる
勇気もなかった。

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