師匠シリーズ
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441 写真 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:28:07 ID:3rNkYIQb0
「昔の人は、魂には量があってその一部が失われると考えて
いたんだろうか」
そういうことになりそうだ。
「じゃあ魂そのものの霊体が写真にとられたら、どういうこと
になる?」
「それは心霊写真のことですか? 身を切られるようにつらい
でしょうね」
と、くだらない冗談で返したがよく考えると、
「でもそれは所詮昔の人の思い込みが土台になってるから、
一般化できませんよ」
俺はしてやった、という顔をした。
すると師匠はこともなげに言う。
「その思い込みをしてる昔の人の霊だったら?」
うーむ。
「どういうことになるんでしょうか」
取り返しにくるんじゃない?
師匠は囁く様な声で言うのだ。
やめて欲しい。
そんな風に俺をいびりながらも、師匠はまた難しい顔をして
写真を睨みつけている。
部屋に入った時から同じ写真ばかり繰り返し見ていることに
気づいた俺は、地雷と知りつつ「なんですか」と言った。

442 写真 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:28:44 ID:3rNkYIQb0
師匠は黙って2枚の写真を差し出した。
俺はビクビクしながら受け取る。
「うわ!」
と思わず声を上げて目を背けた。
ちらっと見ただけで、よくわからなかったが、猛烈にヤバイ
気がする。
「別々の場所で撮られた写真に同じものが写ってるんだよ。
えーっと、確か・・・」
師匠はリストのようなものをめくる。
「あった。右側が千葉の浦安でとられたネズミの国での家族
旅行写真。もうひとつが広島の福山でとられた街角の風景写真」
ちなみに写真に関する情報がついてたほうが、高い値がつく。
と付け加えた。
「もちろん撮った人も別々。4年前と6年前。たまたま同じ
業者に流れただけで、背後に共通項はない。と思う」
俺は興味に駆られて、薄目を開けようとした。

443 写真 ウニ New! 2006/06/03(土) 12:29:54 ID:3rNkYIQb0
その時、師匠が
「待った」と言って俺を制し、窓の方へ近づいていった。
「夜になった」
また難しい顔をして言う。
なにを言い出したのかとドキドキして、写真を伏せた。
師匠が窓のカーテンをずらすと、外は日が完全に暮れていた。
確か来たのは5時くらいだから、そろそろ暗くなって来てもお
かしくないよなあ。
と思いながら、腕時計を見る。
短針は9を指していた。
え?! そんなに経ってんの?
と驚いていると、師匠が唇を噛んで「まずいなぁ。実にまずい」と呟き、
「何時くらいだと思ってた?」
と聞いてくる。
「6時半くらいかな、と」
確かに時間が過ぎるのが早すぎる気もするが、それだけ写真を
見るのに集中していただけとも思える。
「僕は正午だ」

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