学校の怖い話
ツンバイさん

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後日、学校から帰ってくると、親に頼んでいたカメラの写真が出来上がったことを知り、
ランドセルを玄関に叩きつけて自分の部屋に飛び込んだ。
40数枚撮影した写真を一枚一枚ワクワクしながら凝視する。
怪しいものが少しでも写っていたら、あの放課後の出来事は幽霊の仕業だったのだ、と自分で納得できるからだった。
…しかし、現実とは味気もないもので、撮影したすべての写真には「心霊」らしきものは何も写っていなかった。
ピントもロクに合わず、滅茶苦茶なアングルからの便所一色の写真だ。
俺はひどくショックを受けて、もう今後は心霊写真などという馬鹿げた遊びはやめようと思った。
ところが、机の上に散らかした写真を封筒に戻そうとしていた時、ある事実に気がついた。

256 5/6 sage 2007/05/26(土) 19:58:14 ID:4xLNkx3U0
何のことはない。現像された写真よりもネガフィルムに写っている枚数のほうが2、3枚多いのだ。
その足りない分のネガを窓に当てて見てみると、ネガではよく分からなかったが、トイレの個室を写したものであった。
そこで俺は、写真の枚数が足りないことを母親に尋ねてみると、母親は奥歯に物がつっかえたような言い方で
(ああ、残りのはね、捨てた)
俺はこの母親の一言に心底腹を立てたのを覚えている。
俺が撮影したのに勝手に捨てられたのではたまったものではない。
母親の意図も理解せず、俺は一人でプリプリ怒りながら、
居間のゴミ箱の中身をムカっ腹立ててひっくり返しぶちまけ、捨てられた写真を探した。
そしてあの瞬間だけは今でも脳裏にこびりついている。
2、3枚だったと思うが、ゴミに混ざって「執拗に捻じ曲げられた写真」を発見した。
母親のやり方が頭にきた俺は、写真の一枚を無理矢理広げる。
そこに写っていたものは、
個室の天井の通気孔を覆っている網からこちらを覗く、首をひねった長髪の女だった。

――ずっと後になり母親に訊いて分かったことだが、うちの小学校では昔、事故で両脚が不自由になった女子生徒がおり、
中学に入学する前日、自殺して亡くなったという。理由は不明だが、体育が大好きな生徒さんだったそうで、
学校から家に帰ると近所でいつも緑色の一輪車を乗り回していたらしい。
その話を訊いた時、彼女は両脚の無くなった身体で今も一輪車に乗ろうとしているのではないか、と
恐ろしさと悲しさのまじる複雑な気持になったのを覚えている。

257 6/6 sage 2007/05/26(土) 20:02:55 ID:4xLNkx3U0
…以上が俺の小学生の頃の思い出だが、実はこの話には続きがある。
俺が小6になった6月頃のことだったと思うが、
同じクラスの生徒で放課後、バケツで育てていた稲に水を注していた奴が、
「奇声を上げながら廊下を四つん這いで走る女」を見たのだという。
その話を聞いた女子がキャーキャー恐がり、男子はみんなそいつを馬鹿にしてからかっていたが、
俺が学校を卒業する頃にはクラスの連中がその女の幽霊を、
「ツンバイさん」「ツンバイさん」と呼ぶようになった。
四つん這い(つんばい)だから、ツンバイさん。
でも俺は知っている。彼女にはとっくに両脚なんか無いことを。

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