占い・おまじない、呪い
かんひも

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居間に入ると、さらにあの匂いが強くなりました。
そこにKが横たわっていました。
そしてその脇で、Kの父ちゃん、母ちゃん、婆ちゃんが(Kの家は爺ちゃんがすでに亡くなって、婆ちゃんだけです)必死に何かをしていました。

Kは意識があるのかないのか、目は開けていましたが、焦点が定まらず、口は半開きで、泡で白っぽいよだれをだらだらと垂らしていました。

よくよく見ると、みんなはKの右腕から何かを外そうとしているようでした。
それはまぎれもなく、あの腕輪でした。
が、さっき見たときとは様子が違っていました。

綺麗な紐はほどけて、よく見ると、ほどけた1本1本が、Kの腕に刺さっているようでした。

Kの手は腕輪から先が黒くなっていました。
その黒いのは、見ていると動いているようで、まるで腕輪から刺さった糸が、Kの手の中で動いているようでした。

「かんひもじゃ!」

爺ちゃんは大きな声で叫ぶと、何を思ったかKの家の台所に走っていきました。
僕は、Kの手から目が離せません。
まるで、皮膚の下で無数の虫が這いまわっているようでした。

すぐに爺ちゃんが戻ってきました。
なんと、手には柳葉包丁を持っていました。

「何するんですか!?」

止めようとするKの父ちゃん母ちゃんを振り払って、爺ちゃんはKの婆ちゃんに叫びました。

「腕はもうダメじゃ!まだ頭まではいっちょらん!!」

Kの婆ちゃんは泣きながら頷きました。
爺ちゃんは少し躊躇した後、包丁をKの腕につきたてました!
悲鳴を上げたのはKの両親だけで、Kはなんの反応も示しませんでした。

あの光景を僕は忘れられません。
Kの腕からは、血が一滴も出ませんでした。
代わりに、無数の髪の毛がぞわぞわと、傷口から外にこぼれ出てきました。
もう、手の中の黒いのも動いていませんでした。

しばらくすると、近くの寺(といってもかなり遠い)から、坊様が駆けつけて来ました。
爺ちゃんが電話したのはこの寺のようでした。

坊様はKを寝室に移すと、一晩中読経をあげていました。
僕もKの前に読経を上げてもらい、その日は家に帰って、眠れない夜を過ごしました。

次の日、Kは顔も見せずに、朝早くから両親と一緒に帰って行きました。
地元の大きな病院に行くとのことでした。

爺ちゃんが言うには、腕はもうだめだということでした。
「頭まで行かずに良かった」と何度も言っていました。
僕は「かんひも」について爺ちゃんに聞いてみましたが、教えてはくれませんでした。

ただ、「髪被喪」と書いて「かんひも」と読むこと、あの道祖神は「阿苦(あく)」という名前だということだけは婆ちゃんから教えてもらいました。

古くから伝わるまじないのようなものなんでしょうか?
それ以来、爺ちゃんたちに会っても、聞くに聞けずにいます。

誰か、似たような物をご存知の方がいらっしゃいましたら、教えていただけるとありがたいです。
あれが頭までいっていたらどうなるのか・・・?

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  • 四尺 より:

    夏の午後3時に日が落ち始めるわけないですね。

    >普通の道祖神って、男女2人が仲良く寄り添って彫ってあるものですよね?
    違います。そういうものもありますが、全てでは無いし、むしろ少ない。

    結論、色々と考証が甘くツッコミどころが多すぎて、恐い話に水を差している。残念。

  • かんひも