洒落怖
許容範囲

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376 3/5 sage 2009/09/14(月) 02:52:56 ID:UL+vul1d0
シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、シュ、
入り口にある結構大きな木が、微かに揺れ始めたのだ。何事だと一同身を乗り出してその木を見た。
するとその入り口の側に、車椅子に乗った老婆と、その息子くらいの歳に見える男が立っていた。
老婆は葬式帰りのような黒っぽい格好で、網掛けの(アメリカの映画で埋葬の時に婦人が被っていそうな)
帽子を被り、真珠のネックレスをしているのが見えた。息子っぽい男も葬式帰りのような礼服で、大体50歳
前後に見えた。その二人も揺れる木を見つめていた。
シュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュシュ、と音を鳴らして、一層激しく木は揺れた。
振れ幅も大きくなった。根もとから揺れているのか、幹の半分くらいから揺れているのか不思議と分からなかった。
分からないのが怖かった。
ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!
ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!ビュン!
木はもう狂ったように揺れていた。老婆と男は立ち止まり、その木を困ったように見上げていた。
すると神主の青年が、サッと待機所から飛び出すと、二人に走り寄った。

「△△様でしょうか」木の揺れる音のため、自然と大きな声だった。
うなずく男。
「大変申し訳ありませんが、お引取り願いませんでしょうか。我々ではどう対処も出来ません」
こちらに背を向けていたため、青年の表情は見えなかったけれど、わりと毅然とした態度に見えた。
一方老婆と男は、お互いに顔を見合わし、うなずき合うと、青年に会釈し引き上げていった。
その背中に青年が軽く頭を下げて、小走りで戻ってきた。いつの間にか木の揺れは収まり、葉が何枚か落ちてきていた。

378 4/5 sage 2009/09/14(月) 02:55:05 ID:UL+vul1d0
「い、今の何だったの!?」と中年のおじさん。
「あの木何であんなに揺れたの?あの二人のせい?」と彼女。俺はあまりの出来事に、言葉が出なかった。
興奮する皆を、青年は落ち着いて下さい、とでも言うように手で制した。しかし青年自体も興奮しているのは
明らかだった。手が震えていた。
「僕も実際見るのは初めてなんですけど、稀に神社に入られるだけで、ああいった事が起きる事があるらしいんです」
「どういう事っすか!?」と俺。
「いや、あの僕もこういうのは初めてで。昔居た神社でお世話になった先輩の、その先輩からの話しなんですけど・・・・」

青年神主の話しは次のようなものだった。
関東のわりと大きな神社に勤めていた頃、かつてその神社で起きた話しとして先輩神主が、さらにその先輩神主から
伝え聞いたという話し。
ある時から神主、巫女、互助会の組合員等、神社を出入りする人間が、『狐のお面』を目にするようになった。
そのお面は敷地内に何気なく落ちていたり、ゴミ集積所に埋もれていたり、賽銭箱の上に置かれていたりと、日に日に
出現回数が増えていったという。
ある時、絵馬を掛ける一角が、小型の狐のお面で埋められているのを発見され、これはもうただ事ではないという話しになった。
するとその日の夕方、狐のお面を被った少年が、家族らしき人たちとやって来た。間の良いことにその日、その神社に所縁の
ある位の高い人物が、たまたま別件で滞在していた。その人物は家族に歩み寄ると、
「こちらでは何も処置できません。しかし○○神社なら手もあります。どうぞそちらへご足労願います」
と進言し、家族は礼を言って引き返したという。

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