洒落怖
拾ったメモリーカード

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593 4/7 sage 2009/07/11(土) 13:15:59 ID:pfN8wUo/0
場所や時刻は先ほどと同じ。
ただ違うのは少年少女の位置でした。
少女は先ほどの写真より10歩ほど前を歩き、やはりこちらに背を向けています。
ところが少年は先ほどよりも随分と手前、カメラに近いので腰より上しか画面に入っていません。
そして彼はその上体を不自然にひねり、まるで腰と肩を持って誰かがねじったように、
肩と顔だけは私たちの方を向いているのです。
そして私が息をのんだのは、その顔です。
苦痛にゆがんでいるのか、笑いをこらえているのか解らないようなその真っ白な表情は、
普通の顔のサイズの2倍ほどもあるのでした。
身体とのバランスも明らかにおかしく、顔の幅が肩幅と同じくらい。
その不気味な写真から私は思わず顔を背けました。

写真はその2枚だけでした。

自分たちのしたこと(人の写真を見てしまったこと)と、
その写真の異様さとに、私は少し落ち込んでいました。彼も少し青い顔をしているようでした。
その後、私たちは後味の悪さを振り払うように、それぞれシャワーを浴びて少しお酒を飲み、
次の日の予定などを話しながら、1時頃に別々の部屋で床に就きました。

594 5/7 sage 2009/07/11(土) 13:16:50 ID:pfN8wUo/0
日中歩いたためか、寝つきはよかったように思います。
ただ、お酒のせいで眠りが浅かったのか、夜中にふと目が覚めてしまいました。
今度は目が冴えて、なかなか眠れません。
どこかから物音が聞こえるような気もしてきます。
そのうち、思い出したくもないのに昼間の写真が脳裏に浮かんできます。
なるべく他のことを考えようとしましたが、そうするとかえってあの大きな白い顔が迫って来ます。
緊張して、冷や汗が出ました。
部屋に誰かがいるような気さえします。
すると急に喉が渇いてきて、もう眠るどころではなくなってきました。

わたしは思い切って目を開け、リビングに行って水を飲むことに決めました。
自分の部屋を出ると、廊下の先のリビングのドアが開いているのに気がつきました。
一瞬私の足は凍りつきましたが、きっと彼が夜中に起きてきて、
私と同じように水か何かを飲んだのだろうと考えました。
そう考える方が自然だとも思いました。

ゆっくりと廊下を進み、リビングをのぞくと、暗闇の中に彼の背中が見えました。
床にしゃがみ込んで携帯を見ているようで、その明かりがぼんやりと彼の姿を浮かび上がらせていました。
私は安心しました。声をかけようと思いました。
ですが、彼はまだこちらに気がついていないらしく、いま声をかけると驚かせるだろうとも思いました。
数秒だったと思います。どうしようか迷いながら彼を見ていました。

595 6/7 sage 2009/07/11(土) 13:17:39 ID:pfN8wUo/0
すぐに私は彼の様子がおかしいことに気がつきました。
私は彼が自慰をしていることを悟りました。
全身に鳥肌が立ちました。
嫌悪感をいだきながらも、私は彼から目を離すことができませんでした。
音を立てないようにするのに必死でした。
唾液を飲み込むことさえできませんでした。
彼は何かうわごとのようにつぶやいていました。
同じフレーズを繰り返しているように聞こえました。
そして果てようとする彼がゴトリと床に置いたのは、携帯ではなくデジカメでした。
デジカメの画面にはあの不気味な写真が映っていました。
あの顔の少年が私を見て笑ったように見えました。

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