この怖い話は約 3 分で読めます。
その部屋だけはこの世のものとは思えない、異様な光景だった…
ここだけはうろ覚えなのだが、Hの母が包丁を左手に持ったまま下着姿で仰向けになっていた。
息がかなり荒く、仰向けのまま「ハァ…ハァ…」と息切れとかそんなレベルではない苦しそうな呼吸だった。
死んでいたとか誰かを殺したわけではなさそうだが、壁や障子、至る所を切り裂いたのはわかった。
部屋からは悪臭も漂っており、スーパーで売ってるような肉が生のままそこらへんに散乱していた。
その部屋は客間だったようで、床の間があったわけだがそこに誰かが正座していた。
しかも表情が笑っている。老人なのだが男女の区別はわからない。
土気色の肌にぼさぼさの髪、薄紫っぽい着物で目玉が無い。
心霊番組の見すぎだったかもしれないが、この怪現象はあのせいだ、とすぐに思った。
途端に老人はこちらへ首を不自然な動きで向けた。
もうやばい、本当にやばい!
身に迫る本当の危機を感じて、激しく襲ってきた頭痛と吐き気をこらえながら
Hの手をつかみ、必死でその家から逃げた。
俺の家まで数百メートル。後ろも振り向かず、二人とも全力で走った。
187 昔話2/3 sage 2009/06/21(日) 20:32:54 ID:JJsBDJmX0
俺の家ではたまたまオヤジが仕事休みのため、両親ともいた。
そしてHでの家のことをありのままに話した。
Hからの話も色々聞けた。つい昨日から穏やかだった母が錯乱したとの事。
父とは離婚しており、片親だけだったそうだ。
そこで俺は初めてうちの両親もそういう存在を感じる人だということを知った。
だからそんな話を真剣に受け止め、オヤジはHだけを連れてどこかへ行った。
家にいた俺は色々と考えていたが落ち着いた頃、ランドセルを忘れた事に気がついた。
そしてその日の夜、オヤジは俺のランドセルとHを連れて帰ってきた。
何があったのか今でも話してくれないのだが、「もう大丈夫」とだけ言った。
結局Hの母は入院し、あの日あの後何が起きたのかはわからないが
オヤジがそんな御祓いとかなんて出来るわけないと思っているので
仲のいい和尚にでも言ったのかもしれない。
それからはHと良く遊ぶようにもなり、クラスでのいじめじみた事もなくなっていった。
あの日あそこで見た事はなんだったのか今でも良くわからない。
だがこの話で一番怖いというか凄いと思うのが、Hはこの話を覚えていない事だ。
今でも付き合いがあるので、ある日話したのだが、とぼけてる風でもなく
本当にそんな体験してないよ的な感じだった。
人間あまりに怖い思い出とかって記憶からDelete出来るもんなのかね…