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868 本当にあった怖い名無し sage 2009/06/30(火) 04:23:50 ID:CkQosg+60
姉は長男を生む前に一人子供を流している。
しかし…僕は知っている。
本当はあれは流産なんかじゃない。
卒業研究の合間。
やっとのことでひと段落を付くことができたので姉を見舞うことにした。
妊娠9ヶ月目に入ったはずであった。
病室へ入ると姉は窓の外を見ているようだった。
何か様子がおかしい。
あまり表情を読み取るのは得意ではないのだが、目に光がないという表現があっているようであった。
869 本当にあった怖い名無し sage 2009/06/30(火) 04:26:58 ID:CkQosg+60
ベッドの横に座っていた義兄が僕を見ると近づいてきた。
「〇○君。
来てくれてありがとう。
Mと話してやってくれないかな。」
Mと言うのは姉の名前だ。
「どうしたんですか?」
「流れてしまったんだ…」
義兄も放心している様子であった。
正直僕は困った。
流産をしてしまった姉にどんな言葉をかければいいのかが分からない。
「でも…」
「お願いだ…」
義兄はそれだけ言うと病室を出ていった。
870 本当にあった怖い名無し sage 2009/06/30(火) 04:28:00 ID:CkQosg+60
義兄が出て行っても姉は相変わらず窓の外を見ている。
いや、姉の目はどこも見ていないようだった。
「母さんたちには知らせた?」
話しかけても返事が返ってこない。
いたたまれなくなりその場から逃げ出したくなった。
どのくらい時間が経ったか分からなかったが、長い沈黙の後、姉がようやく口を開いた。
「私の赤ちゃん…」
僕は泣きたくなった。
泣きたくなったが、涙を流すことができなかった。
男の子はそうやって育てられるものだ。
「私の赤ちゃん…体が…」
「体が…?」
体がどうしたのだというのだろうか。
「さかな…」
姉はまた黙ってしまった。
僕はそれ以上聞くことができない。
成長することがなく生まれたためにどこか普通と違かったのかもしれないと思った。
いたたまれなくなりその場を立つとまた姉が口を開いた。
「私…死ぬって…」
意味が分からなかった…
「聞いたこともない元号だった…あんな死に方…」
875 本当にあった怖い名無し sage 2009/06/30(火) 05:53:28 ID:CkQosg+60
このことは誰にも話していない。
義兄にもだ。
僕には思い当たることがあった。
小さい頃の胎児は魚のような外見をしているという。
姉は魚の体をした子供を産んだのだろう。
人の顔をし、人でないものの体を持った存在を僕は知っている。
くだん…件だ。
死を予言したということは、雄の件だ。
雄の件は凶事を予言するという。
予言をしてから、たちどころに件は死ぬという。
姉は流産をしたわけではない。
予言をしたから子供は死んだのだ。
「あんな死に方」を僕は想像したくもなかった。