洒落怖
瓶コーラ

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誰かが溺れている!!
そう確信した俺は、服を脱ぎ、下着1枚で海に飛び込んだ。
俺は、なぜか恐怖心は無かった。
あれほど、海で泳ぐことを嫌がっていたのに?

溺れている人のところまで、到達できる自信も無かった。
間に合う確証など、どこにもなかった。

だが、海で溺れることよりも、目の前で1人の命が失われようとしている。
あの時、俺は子供で、Aが溺れているのに、自分も横で溺れるだけで何も出来なかった。
これ以上、失いたくはない。

どう泳いだのかも良く覚えていない。
必死に泳ぎ続け、溺れている人のところに近づいた。
しかし、あと少しと言うところで、もがいていた腕が水面から姿を消した。

953 瓶コーラ sage 2011/08/29(月) 01:22:17.18 ID:d2yMAUg90
まずい!沈んだ!
そう思った瞬間、何かに足をつかまれる感覚があった。
そして、俺は海中へ沈んでしまった。

海の中では、俺の左足を何者かが掴んでいた。
海中で、そこまで鮮明には見えないが、少なくとも、生きている人では無いということは確信できた。
そいつは長髪でロングスカート(ワンピース?)を着ていた。
この服装で、沖まで海水浴などあろうはずもない。
その女は、何やら気味の悪い顔で笑っているようだ。

右足で蹴ったりして、必死に振り払おうとするも、女は俺の脚を離さない。
俺の息も続かなくなり、目の前に、徐々に死が広がってくるのが分かった。

もう、駄目だ…
その刹那、誰かが俺の腕を掴んだ気がした。

954 瓶コーラ sage 2011/08/29(月) 01:23:36.29 ID:d2yMAUg90
横を見ると、そこにはAが居た。
当時と同じ水着姿で、両手で俺の腕を掴んでいる。

Aは、にっこり笑っていた。
今、俺の左足を掴んでいる女とは、少し違った笑顔だ。
あの時の、俺と遊んでいたときの笑顔だ。

あぁ、A。お前か。
お前もだったのか。
最期に、会えてよかった…

そう思った瞬間、俺の体は海面へと浮き上がり、眩しい太陽の下に晒された。
もう、足を掴まれている感触は無い。
Aの姿も、見えない。
空気を肺いっぱいに吸い込み、俺はまだ生きているという感覚に不意に陥った。
何故か、泣いていた。

そして俺は、自力で浜辺まで泳ぎ着いた。
浜辺に上がってみると、掴まれていた左足、そして、Aが掴んでくれていた腕にも、アザがついていた。

俺を助けてくれたのか…
Aに感謝しつつ、もう家に帰ろうと、浜辺に挿していた瓶コーラを見てみると、Aの分のコーラが半分くらい減っていた。

また来るよ、A。

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