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【お前は車から出んな】
先輩の声が頭をかすめる、でも、でも・・・
髪の毛の間から、ついに目が覗く。般若の面みたいなそれと、目が、あった。
「出るっきゃないっしょおお!!」俺は思いっきりサイドブレーキを引き、ドアに手をかけた。
と、「ガチャ」後部座席の扉が開く。
「なにしとんだボケがあ!」先輩の声が響き渡る。聞きなれた怒声が、天使の声に聞こえた。
808 本当にあった怖い名無し 2010/06/29(火) 01:21:46 ID:6xHvSwpo0
先輩は後ろの奴の頭をつかむと、無理やり外に引きずり出す。
【ごぁぁぁぁぁ!】
「ごあ、じゃねえ!クソがああ!!」
しばらく外から「てめえ、おら!」「人が寝てると思いやがって!」
怒声と何かを殴りつける音が響いていた。
俺はその間、ドアにしがみつき、泣きながら目をつぶっていた。
「話ついたぞ」
どれぐらいの時間が経っただろうか。俺は先輩の声で気がついた。カーステからは「楽園ベイベー」が流れている。
「ああ、あうあう」情けないことに、まともに言葉が出ない。正直、小便出てると思った。
「運転してやる。変われ」
俺はプルプルしながら助手席に移った。気づいたら、後ろの車はもうどこにもなかった。
809 本当にあった怖い名無し 2010/06/29(火) 01:23:21 ID:6xHvSwpo0
夜の山道を、再び事務所に向かう。もう、それ以上この日は何も起こらなかった。
「さっきの女どもな、いい奴だった。青白おやじのこと教えてくれたんだわ」
帰りの道、先輩は独り言のように呟いた。そして、
「あー、寝すぎた」といった。
その日は事務所に着いたら速攻で家に帰り、電気をつけて寝た。
「夜、現場からイッチーと二人で帰って来た俺君が、目を真っ赤にしてすぐに帰った。」
「イッチーと俺君に、なにかあった。」
「イッチーと俺君は、できている」
職場に妙な噂が流れ始めたのはそれから間もなくのことだった。
以上です。お付き合いのほど、ありがとうございまし