洒落怖
牛の森

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足場は悪く、周りは木が茂っているのでうまく走れない。
それでも、とにかく全力で走った。
後ろから誰かが追いかけてくる気配がする。
後ろを振り向きたい衝動に駆られるが、後ろを振り向いたらいけないような気がしてならない。
あの老婆がニコニコ笑いながら包丁を持って追いかけてくる姿が容易に想像できる。
前を走る友達が不意に後ろを振り向いた。
俺もそれにつられて、つい後ろを振り向いてしまった。

325 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/04(月) 21:16:48.11 ID:DlVUXV650
そこに老婆はいなかった。
代わりにあの猿が追いかけてきていた。
猿はあっという間に俺達に追いつくと、俺達の右側の木に飛び移りキーキー鳴いて俺達を威嚇してきた。
手は出してこない。ただ鳴いて威嚇してくる。
猿に気を取られながらも必死に走っていると、何かが見えてきた。
さっきの小さな牧場だ。

どうしてだ?と困惑しながらも、今度は俺が先頭になって逆方向へ走りだした。
また猿が右側の木に飛び移りキーキー鳴いて威嚇してきた。
しばらくすると前の方に陽の光が射す場所が見えた。あの牧場だ。
俺は足を止め、泣きそうな顔で後ろを振り向いた。
友達も泣きそうな顔をしていた。

326 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/04(月) 21:20:47.85 ID:DlVUXV650
俺達は数秒、顔を見合わせていたが、「逃げなきゃ・・・。」という友達の声で、また逆方向へ走りだした。
相変わらず猿はキーキー鳴いて俺達を威嚇する。
右のほうから微かに声が聞こえた。
俺達は足を止め、進行方向を右へ変えた。
「お~~~~い、森へ入っちゃダメだぞ~~~~、すぐに出てきなさ~~~~い。」
今度ははっきり聞こえた。

俺達は声にならない声を上げ、その声の方へ走った。
牛の森の入口付近に顔見知りのおじさんを見つけると、俺達は泣きながらそのおじさんにしがみついた。
おじさんは自転車が牛の森の前で止まっているのを見つけたので、声を上げていたという。
おじさんと一緒に牛の森を出ると、あの猿のキーキー鳴く声が聞こえた。
牛の森のほうを見ると、猿はまた右手で木にぶら下がりながら左手でクイックイッとおいでおいでをしてくる。
俺達が怯えるのを見て、おじさんが「オラァァァ!!」と猿に向かって叫ぶと、猿はびっくりして牛の森の中へ消えていった。

327 : 本当にあった怖い名無し : 2012/06/04(月) 21:24:45.81 ID:DlVUXV650
俺達は牛の森で見たことをおじさんにも親にも話したが、信じてくれたのかどうなのか曖昧な感じでよくわからない。
学校の友達に話すとその話がかなり広がり、老婆にボディブロー入れたとか、老婆に焼肉ごちそうになったとか訳のわからないことを言いだす奴も出る始末。
それ以来、牛の森には入るどころがほとんど近づかなくなったので、あの猿と牧場と老婆の真相はわからない。
森の奥で牧場をを営んでる変わり者のお婆さんだったのか、それとも・・・・・。

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