何でも怖い
モッケ

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目を覚ましたのは翌朝でした。
私と付き役の人達が戻ってこないのを不審に思い、神主さんをはじめとする
祭の世話役の人が祠に向かい、そこで異変に気付いたとのことです。
付き役の人達は特に外傷はなかったのですが、起こされるまで気を失っていたそうです。
私は昼前に、古い墓地で叔父に発見されました。
付き役の人達は何があったのか全く覚えておらず、私は泣きながら、昨晩一つ目の
化け物が祠に来て追いかけられたことを大人達に話しました。
すると誰かが「モッケが出たんか」と言い、神主さんが「×××を見てこい!」と、
指示を出しました。
ちなみに、私が隠れようとした墓石は倒れていましたが、地面に穴はあいていませんでした。

132 : 本当にあった怖い名無し : 2012/03/04(日) 12:36:09.81 ID:C8/Dhig30
それから祖父の家に戻され、その日一日、神主さんがずっと私に付き添っていました。
その時に神主さんから、一つ目の化け物について説明を受けました。
一つ目の化け物は、この辺りでは「モッケ」と呼ばれていること。
山の中に棲み、山に入ってきた村人を迷わせ、女を犯し、時には喰っていたこと。
しかしある侍が当時の神主の協力を得て、山の中の岩にモッケを封じたこと。
その岩には注連縄をして、岩に続く道にも鳥居をたてて注連縄をし、立ち入り禁止に
したこと。
今行われている神楽舞は、その一連のエピソードを元にしていること。
正直「嘘だろ」と思ったのですが、さすがに自分が見たものを否定することは
できませんでした。
既に皆様お察しかと思いますが、兄達はそのモッケが封じられていた禁域を
侵してしまったのです。
神主さんが言っていた「×××」というのは、モッケを封じた岩のことでした。
岩を見に行った人の話によると、岩は真っ二つに割れていたそうです。
鳥居の注連縄も緩んでいたので、誰かが侵入したんだ!ということが判り、
大騒ぎになりました。
そこで兄達は黙っていられないと思い、大人達に禁域へと足を踏み入れたことを
打ち明けたそうです。兄達はみっちり叱られていました。
兄の左足が腫れたのはおそらく、注連縄につまづいたからだろうとのことでした。

133 : 本当にあった怖い名無し : 2012/03/04(日) 12:36:38.92 ID:C8/Dhig30
封じていたモッケが放たれた、と青くなる神主さんに、私は墓から飛び出した
鎧武者のことを伝えました。
神主さんは半信半疑といった顔つきでしたが、やがて私を見て
「モッケに追われたのに逃げ切ったという話は、確かに今まで聞いたことがない」
と、呟きました。
神主さんが私に付き添っていたのは、私の体調を心配していただけではなく、
モッケから守るためでもあったそうです。
同系列の神社の、他の神主さんにも協力を仰いで岩を調べたところ、
モッケの気配は綺麗さっぱり消え失せていることがわかったそうです。
肝心の鎧武者についてですが、どうやらこれは私のご先祖様ではないかとのことでした。
祖父の家の墓は菩提寺の墓地ではなく、祖父が持っている山の一画に墓地を
設けています。
モッケに追われた時に私が逃げ込んだのが、この墓地だったわけです。
祖父の家の祖先を辿っていくと、なんでも平家の落ち武者になるとのことですが、
本当かどうかはわかりません。

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