洒落怖
囁き

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「おい、死ねよ、なぁ、死ねよ、死ね、死ねって、お前みたいな奴死んだほうがいいよ、おい、死ねって、ほらさっさと死ね、さっさと死ねって、自殺しろよ」
「死ねって、クソが、お前が死ねばみんな喜ぶから、死ね、頼む、死ねって、なぁ、死ね、グズが、死ね、死ね、死んでくれ、飛び降りろ、死ね」
「頼むよ、死んでくれ、死んでくれよ、グチャグチャになってさ、死ね、一人で死ね、死ねよ、ほら、死ね、ほら」

俺は言葉を失った
とてもSが冗談を言ってる様には見えなかったからだ
そしてSはこう続けた
「・・俺さ、Kさんにも、やっぱり悩みとか色々あると思うんだよ」
「俺はずっとKさんに頼りっぱなしで、甘えてた。正直みんなもそうだと思う」
「だから、俺はKさんに頼るのはもう辞めようと思う」
「Kさんも俺らと同じ人間なんだよ」

確かに、Kさんが冗談では無く本気で弱音を吐いたりしてるとこなんて見たことない
Kさんはみんなに親しまれて、仕事ができて、イケメンで、本当にやさしくて・・
そんなKさんにも、心の闇ってやつが確かにあるんだ
そう思った

「俺さ、今日Kさんと会ってみようと思う」
「大丈夫、バイトもやめないし、ちゃんと話するよ」
「あとこの話は誰にも言わないで欲しい。俺もお前に言ったことはKさんに言わない」
「休みの日に呼び出して悪かった、じゃあまた明日な!」
そういってSとは別れた

正直、俺はまだ信じられなかった
まさかKさんがそんなこと・・きっと、きっとあいつが酔っ払って聞いた幻聴だろう
そうに決まってる
あのKさんがそんなこと・・想像すらできない
そうして家に帰り、無理矢理に寝た

次の日、バイトに行った俺はSが死んだことを聞かされた
Sは昨日の深夜、裸で高速道路にいたところを車に撥ねられて死んだ
発見された時はもう原型を留めていなかったそうだ

Sの通夜ではみんな泣いていた
Kさんも泣いていた
俺は涙が出なかった
とにかく一人で酒を飲んだ
酒を飲んで、飲んで、飲みつぶれた

目が覚めると、Kさんが俺を介抱してくれていた
俺が「すいません、大丈夫です」と言うとKさんは俺の肩をポンと叩いて一言だけこう言った

「ざんねんだったな」

俺はそのあとすぐにそのバイトを辞め、大学も卒業して今は故郷を離れ働いている
Kさんはどこかいい会社に入って早々に出世し結婚して子供が産まれたと聞いた

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