この怖い話は約 3 分で読めます。
俺には弟がいる。
この弟は少し変わった奴で、一般人には見えない何かを見聞きし
小さい頃はいつも怯えていた。
弟が中学3年の時に聞いた事がある。
「人って死んだらどうなるの?」
このなにげない一言は、この弟を世界で一番よく知る俺にとって勇気のいる質問だった。
それは弟を信じ始め、病気ではなく本当に「見えている」という事を理解しようとした一言だったからだ。
恐らく両親が事故で亡くなった事が関係していたのかもしれない。
葬式を終え、嫌がる親戚に引き取られた俺達は2人で無言のまま荷物をまとめていた。
弟に背を向け、ダンボールにあまり使ってない真新しい教科書類を詰めながら質問する。
『人って死んだらどうなるんだ。』
俺からこんな言葉が出てくるなんて予想してなかったのか、弟は少し考えてから喋り始めた。
『違う世界に行く。』
『それはどんな世界なんだ?』
首だけ向けてさらに質問をぶつけた。
『言葉にするのは難しい。ただ、俺達のいる世界とは違った世界があってそこに行く。』
『天国や地獄、そういった世界という事か?』
『少し違う。俺達の住んでるこの世界は、普通の人は認識出来てないだけでいくつもの世界が重なり合ってる。』
正直なにを言ってるかわからなかった。
554 :違う世界 2/5 ◆lEMchm76dQ @\(^o^)/:2014/06/29(日) 19:24:27.97 ID:wKuXwA/b0.net
『映画館のスクリーンを想像してみて。』
弟はそう言って掌を出す。
『俺達の今いる世界はこの手に写された映画のような物だと考えてね。』
掌を合わせて弟は話を続ける。
『そこにもうひとつ、映画を写すとどうなる?』
『ごっちゃになってなにがなんだかわからなくなるな。』
ますます意味がわからない。
俺の近くにあった灰皿を引き寄せ弟が慣れた手つきでタバコに火を付けた。
『同じ時、同じ瞬間に違う世界が同じスクリーンに上映されてる。
そしてそれぞれの世界からは自分の世界とは違う世界が見えない。』
要はパラレルワールドという事だろうか?そして人が死んだらその世界に行くという事だろうか?。
『その考えでも合ってるのかな。とにかく色んな世界が今この瞬間も流れてるんだよ。
そしてその中の一つに、人が天国と言うイメージに近い世界がある。』
雲の上に花畑があって、とても綺麗な天国を想像した。
まさに絵本の世界だ。
『あそこは紛れも無く「現実」の世界だよ。肉は無いけどイメージした「なりたい自分」になって行くんだ。』
『よくわからないけど父ちゃんと母ちゃんはそこに行ったのか?』
『多分ね。ただ、前に見た限りその世界の入り口は中からしか開かないようになってる。』
つまり、今の世界からその世界に行くには中から誰かに入り口を開けて貰う必要があるという事。』
『開けて貰えなかった人は?』
『地獄に近い世界への入り口はいつも開いてるよ。』
一つの答えだった。