子どものころの怖い話
成長する夢

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「ところが、その力を奪っていった奴が居る。それが『もう一人のお前』だ」
「『もう一人のお前』ってのは、お前がこの世に生まれることによって、代わりに生まれることができなかった魂なんだよ。
それで、仕返しみたいにお前の力を奪っていって、それを持ったまま、こことは違う別の世界で生まれた。
けど魂同士は繋がりあってるから、そいつの人生をお前は夢で見たってことだな」

478 426 sage 2011/05/21(土) 17:27:48.62 ID:CqCIxrzt0
「ただ…そいつは、もう死んでる」
「早くね!?(私)」
「異世界とこっちの世界とではな、時間の流れが違うんだよ。だからそいつはもう生まれて、死んでる」
私はここへ来てようやく『成長する夢』の続きを見なくなった原因を悟った。最後の夢はどうだったか。風の中落ちる夢であったのだから。
「…まあそういうわけで、そいつが死んだから今現在その力は宙ぶらりん、引き取り手の無いまま異空間を漂ってる。お前の見たっていう緑色の光はその力な。
どうする?ちょっと修行すれば、その力を手に入れることも可能だぞ?」
なんてことを言われたが、この日は流石に頭を整理しきれず「考えておきます」とだけ返事した。
別れる前に、「そういえば、夢を見る前に決まって凄い恐怖を感じたんですけど、あれって何ですか?」と訊ねると、Kはさも事も無さげな顔をしてこう言い放った。
「人間、知らんモンを目にする時はそりゃあ恐怖するだろ」
言葉少なすぎて解釈に困るが、要するに異世界に関わるものは誰しも初めて目にするものであるため、原始的な恐怖を感じるのだということだった。

481 426 sage 2011/05/21(土) 19:12:59.57 ID:6GGjwortO
Kと別れたその日の夜。私は本当に久しぶりに、あの夢を見ることとなった。
ただ、恐怖感までは同じなのだが、その先に聞こえてくるはずの「音」は一切聞こえず、まるで残り滓でしかないような空虚な夢だった。
そこで、そろそろと眼を開けてみると…
(なんだこりゃ!?)
目の前に浮かんでいたのは、緑色に光る古代の壁画のような模様だったのだ。
アステカ文明とか、ナウシカの鳥の人なんかの絵を思い浮かべるとそれっぽい気がするw
手を伸ばしてはみたが、当然異空間にあるという力なんぞ掴むことは出来なかった。

結局その力を手に入れるか否かの答えを出す前に、Kは音信不通となり(多分警察にパクられたような気がするw)、話も文字通り宙ぶらりんとなってしまったが。
今ならその答えは出せる。そんな力は要らないのだ。
過ぎた力を持てば、それは破滅しか呼ばないだろう。あの異世界のもう一人の私の最期のように。

終わり。
最後に、この話は創作ではなく実話です。

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