宗教
情熱の結果

この怖い話は約 4 分で読めます。

母親は立ち上がると、103号の前に行きインターホンを押しました。こんな深夜に
非常識極まりないと思いましたが、しばらくすると中の人がインターホンに出て
きたのか母親が何か喋っている様です。
母親は驚いた事に女の子を抱っこしてドアの覗き穴の場所に上げました。
まるで女の子をドアの向うの住人に見せている様でした。
5分くらいそうやっていたでしょうか、今度は104号に向かいます。104号の
インターホンには応答が無いようでした。
遂に母親は私の部屋のドアに近付いてきました。

ドアの目の前に来た親子がはっきり見えました。母親の顔は汗でびっしょりと
濡れています。ストレートスタイルと思った髪は汗で濡れて顔に張り付いていて
まるで水から上がったばかりの様になっていました。
インターホンを押してきましたが当然反応は有りません。ジッと顔をインターホンに
くっ付ける様にして何度もボタンを押しています。
押し方が弱いと思ったのでしょうか、グイグイと何度も押しているのです。
私はドアの前で一切の物音も立てないようにしていました。居留守がばれると
あの親子の様子ですから何をしでかすか分かった物じゃ有りません。
それこそ息も止めていたほどでした。インターホンを押すのを止めた母親はドアノブ
に手をかけました。信じられませんが下を見るとドアノブが動いています。
何度もガチャガチャとやった後、親子はやっと諦めたようでアパートの入り口の方へ
戻っていきました。
(いや~まいったな。やっと帰ったか)ドッと疲れた私は玄関から部屋へ入り
照明のスイッチを押そうとして手に持った鞄を床に置きました。部屋のドアを
開けようとした時にフッと思いついたのですが私のアパートの一階の各部屋には
外に洗濯機なんかを置いておくスペースが有ります。アパートの入り口から横へ
廻ると各部屋のそんなスペースに容易に入れるのです。
まさかとは思ったのですが、さっきの親子が部屋の外の洗濯機置き場に居たら?
と思うと恐くなって部屋の明かりを点けるのを躊躇いました。
もし外で待っていたら?そこで部屋の明かりが点いたら?どうなるでしょう。
そう考え始めるとカーテンの向うが不気味で仕方有りませんでした。
あれこれと余計な想像もはたらいてしまって、結局玄関に30分程ジッと
していました。それからドアの覗き窓を確認して誰も居ない事を確認した
あと部屋へ入ったのですが、足音を立てないように慎重にして、結局部屋の
明かりは点けづにスーツだけ脱いで床にゴロンとして寝ました。

断続的な眠りをとってようやく外が明るくなり、我慢していたトイレにも行き
シャワーも浴びて一息ついたところで昨夜の郵便受けを見に行きました。
103号のフタが半分開いています。悪いとは思ったのですが覗いてみました。
【昨夜は夜分遅く、大変失礼致しました。○○(例の女性と思われる名前)】
と書かれたノートを数枚折った物が置いてあります。さすがに中身を読むのは
躊躇われすぐに元に戻しました。104号を覗くと
【ご不在に伺い、お会いできず残念です。○○】とあります。うわあ、気持ち
悪いなぁと思いながら、自分の郵便受けを探ってみました。
案の定ノートを数枚たたんだ紙片が入っていました。
【深夜までお仕事だったようですね。ご苦労様です。○○】と書いてあります。
なんだ、これ?と思いながら広げてみると
【U様(私の名前です)。昨夜はお仕事でお疲れの所、突然伺いまして失礼致しました】
とあり、以下その親子が山陰のS県出身であり、親子で△△教に入信していて
全国各地を廻りながら「この人は」と思った人に会って△△様の話をしている、云々と
書かれていました。なんでも一昨日は隣のK県にいて昨日、徒歩で私の住むO区に
やって来たそうです。(因みに私が住んでいたのは都内某空港のそばです)
5月の大型連休の直後でしたから、夜とはいえ徒歩でずっと来たからあのように大汗
をかいていたのだろうか?などと思って読んでいますと最後の方に
【U様のお宅はインターホンが壊れておいでのようですね。】とあります。
【娘が是非お会いしたいと裏でお待ちしていましたが、お気づきになられなくて残念でした】
心臓がドキッとしました。まさか。やっぱりあそこに居た?
慌てて部屋に駆け上がり、カーテンを開けました。するとガラスにくっきりと小さな手形
が付いており、両手の間には丸い湿った跡が有るのです。
あの女の子は両手を付いて、顔をガラスにピタッと付けて中を覗いていたのです。
いったい何時までそうやって私の部屋を覗いていたのでしょうか。

この怖い話にコメントする

情熱の結果
関連ワード