師匠シリーズ
超能力

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945 超能力  4/9 ウニ New! 2006/02/22(水) 23:52:56 ID:CqBHiC0Y0
「こちらを箱A、こっちを箱Bとする」
同じような箱に、マジックでそう書いてある。
なにが始まるのかドキドキした。
「Aの箱には千円、Bの箱には1万円が入っている。この箱を君にあげよう」
ただし、と師匠は続けた。
「お金を入れたのは実は予知能力者で、君がABどちらか片方を選ぶと予知していたら、正しく千円と1万円を入れている。しかしもし、君が両方の箱を選ぶような欲張りだと予知していたら、Bの箱の1万円は入れていない」
さあ、どう選ぶ?
そう言って、選択肢をあげた。
「①箱Aのみ
 ②箱Bのみ
 ③箱AB両方
 おっとそれから、
 ④どちらも選ばない」

どういうゲームかよく分からないが、頭を整理する。
ようするにBだけを選んだらちゃんと1万円入ってるんだから、②の「箱Bのみ」が一番儲かるんじゃないだろうか。
師匠は嫌らしい顔で、「ほんとにそれでいいのぉ?」
と言った。

946 超能力  5/9 ウニ New! 2006/02/22(水) 23:53:54 ID:CqBHiC0Y0
ちょっと待て、冷静に考えろ。
「その予知能力者は、本物という設定なんですか」
肝心なところだ。
しかし師匠は「質問は不可」というだけだった。
目の前を箱を見ていると、そこにあるんだから、いくら入ってようが両方もらっといたらいいじゃん? と俺の中の悪魔がささやく。
待って待って、予知能力が本物なら両方選べばBはカラ。
Aの千円しか手に入らないぞ? 
と俺の中の天使がささやく。
予知能力が偽者ならどうよ? そう予知して、Bにお金を入れなかったのに、実際はBだけを選んでしまったら、もうけは0円だぞ。
と悪魔。

そうだ。だいたい予知能力というのがあやふやだ。
目の前にあるのに、その箱の中身がまだ定まっていないというのが、実感がわかない。
お金を入れる、という行為はすでに終わった過去なのだから、今から俺がどうしようが箱の中身を変えることは出来ない、という気もする。
じゃあ、③の箱AB両方というのが最善の選択なんだろうか。

947 超能力  6/9 ウニ New! 2006/02/22(水) 23:54:43 ID:CqBHiC0Y0
「さん」と言い掛けて、思いとどまった。
これはゲームなのだ。所詮、師匠が用意したものだ。
あやうく本気になるところだった。
たぶん、③を選ばせておいて箱Bは空っぽ、「ホラ、欲をかくから千円しか手に入らないんだ」と笑う。
そういう趣向なのだろう。
なんだか腹が立ってきた。
②のBだけを選んでおいて、「片方しか選んでないのに、1万円入ってないぞ」とゴネることも考えた。

しかし③の「両方」を選んでおけば最低でも千円は手に入るのだから、次の仕送りまでこれで○千円になって・・・
と、生活臭あふれる思考へと進んでいった。
すると師匠が「困ってるねえ」
と嬉しそうに口を出してきた。
「そこで、一つヒントをあげよう。君がもし、透視能力、もしくはテレパシー能力の持ち主だったとしたら、どうする?」
きた。また変な条件が出て来た。
予知能力という仮定の上に、さらに別の仮定を重ねるのだから、ややこしい話になりそうだった。

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