この怖い話は約 3 分で読めます。

俺はさすがにつかれてきた手を耳から話した。
ドン!
俺は後ずさった。扉全体が揺れたのだ。
続いて、また扉が固いものにぶつかった音をたてて振動する。
体当たりしているのだ。
ノックといい体当たりといい、倉の外にいるモノが実体を持っているのは確かだ。
俺はすぐさまクワを持ってきた。
扉は尚も揺れている。俺はその前に立ってクワを構えた。
すると、鉄製であるにも関わらず、倉の内側に向かって扉の中央が盛り上がってきた。
俺は生唾を飲みこんで、一番奥まで退去する。
お札の一部が剥がれている。
ギシギシと音をたてながら盛り上がりはさらに増していく。
俺はその時お札の文字が蠢いているのを見た。
虫が這うように文字通しがぶつかりあい、恐怖と共に見入ると、最後には文字が寄り集まって、人間の顔を形作った。
それは何かを叫ぶように口を縦に開き、苦しみの表情を張り付けていた。
俺はすくみ上った。
扉の鍵の一部が今にも外れそうになっていた。
お札も半分がめくれて、風が吹くはずもないのに激しく揺らめいている。
札に現れた顔が叫んでいるような低い風の音が、俺の耳に渦巻いた。
俺の動悸は最大限にまで達した。
刹那、空気が振動した。
俺はその場にへたり込んだ。

恐る恐る扉を見る。俺は素っ頓狂な声を出した。
扉に異常はなかった。先ほどまで盛り上がっていたはずだったが何の変化もない。
ただ鍵は一部壊れていた。お札は完全に剥がれ落ち、焼けたあとのように黒く塗りつぶされている。
俺は肩で息をしながら立ち上がった。扉に手を触れる。
熱くもなく、柔らかくもないただの鋼鉄だった。
扉に耳をくっつける。
外からの音はない。やはりお札の効果だったのか、奴は立ち入れなかったようだった。
俺は確保していた寝床に行って横になった。
そして、恐怖で朦朧とする意識を越えて、微睡に落ちていった。

眼が覚めたのは朝の五時だった。
夏の早朝は幾分明るくなっているはずだ。
俺は扉に近づいて、耳をそばだてた。
何の音も気配もない。
俺は静かにカギを開けた。開いていくと、空虚な庭が目の前にあった。
大きく深呼吸して新鮮な空気を吸いこんだ。
俺はふと、刃物のことを思い出して、水を飲みにいくついでに包丁を取りにいくことにした。
あの魔法陣を途中まで完成させたのだから、最後までやり遂げたかった。
俺は台所にいって水を一杯飲んでから、何本かある包丁の一本を手にとって外に出る。
一先ず危機は乗り越えた。
昨夜の記憶は鮮明に蘇り、鳥肌となって俺を襲い続けた。
薄い光のもと、異世界から人間の世界に戻ってきたように感じていた俺は、安心して蔵へ戻る。
が、
「ううぅぅぅぅっぅぅぅぅぅぅぅ」
突如後ろの茂みから、うめき声をあげた黒くて細い物体が、地面を跳ねながらこちらに向かってきた。

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bronco

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