この怖い話は約 4 分で読めます。

「あの化け物も……当然」
「ふむ。この世のものではない」男は呟いた。
「それで、その箱を開ける方法はないんですか?」
俺は懇願するように問うた。男は冷静に告げる
「言った通り無理だ。当事者に頼む以外には」
「ならこの箱をくれた彼女に掛け合ってくれるんですね!」
「それは断る」
「!?」
俺は意味がわからなかった。
それほどあの少女が強力だというのだろうか。
「さっきの化け物だって退かせたじゃないですか」
「あれは小物にすぎん」
「あの少女は一体何なんです。それにあなたも。人ではないんでしょう? 別のところから来たんでしょう?」
「追及すればさらなる堕落が待つぞ。お前は呪いを解くことだけに専念すればいい」
確かにそれだけで俺は精一杯だった。
これ以上面倒事に巻き込まれるのはごめんだ。
「交渉がダメなら、他に箱を開けてもらえる方法はないんですか!?」
「交換条件しかない」
「交換?」ただの交渉では無理ということだったのだろうか。
「彼らは邪悪を好む。我らは代償を好む。それ以外の興味はない。より邪悪のものを彼女に渡せばいいのだ」
「邪悪、代償……」

「お前も払うのだぞ」
「じゅ、寿命……ですか」俺はぱっと思い浮かんだ単語をいった
「どれでもよい。しかし私は身体の一部を推奨する」
「何故です」
「好きだからだ」
俺は何も言えなかった。
最悪寿命でもいいと思った。あの生物に殺されるより百倍もマシだからだ。
すでに逢魔時だった。
俺はわたしが森にいる気がした。俺は男と共にB山へ足を踏み入れた。

するとそこへ、Uが怯えながら俺のところへ駆けてきた。
「俺昨日見ちまったんだ。窓の外で跳ねてる変なものを。お前もみたか!?」
俺はとりあえず否定した。Uには男が見えていないようで俺だけを見て話していた。
男が横でいった。
「そいつも連れて行け」
「え」
「いい材料になる」
俺は考え込んだあと、頷いて、
「実は俺もそいつのこと知ってるんだ。だから今、化け物から身を守るために森へ行く。Uくんも手伝ってほしい」といった。
こいつにお願いするなど屈辱だった。
「わ、わかった」とUは泣きべそをかきながらいった。
道中、Uは男が見えていないので、俺は二人との会話を同時にこなさなければならなかった。

だからすれ違いも起こった。
「なぁ、どうして俺に手伝えなんていったんだよ」
Uがいきなりいって、俺は驚いた。Uも引っ掛かりを覚えていたのだろう。
「そっちが……」
いいさして俺は口を噤んだ――そっちが今にも泣きそうになっていたし、男の命令だから、などいえるはずもなかった。
「それにお前、どうして平気な顔してんだよ。得たいの知れないモノがいるんだぜ?」
「俺だって怖いよ。でもそんなこと言ってちゃ解決なんてしないだろ」
「それは、そうだけどよ」
Uは黙り込んだ。
しばらくして「お前は俺を恨んでるか?」と唐突にUが訊いてきた。
「……訊かなくてもわかると思うけれど」俺は苛立ち混じりにいいのけた。
「そうだよな。いじめたんだもんな」
「まさか謝るつもりじゃないよな」
「……」Uは何もいわなかった。
「お前だってな生意気なところが悪いんだ。俺たちだって遊び半分だったし……お前も俺たちを気にくわなかったんだろうけどよ、どこだよ。まぁ直すってわけじゃないけど」
「どこで彼女と出会った」
男が口を挟んだ。俺は前方に、当初呪いの準備をしていた大木を見つけた。
「アソコ」
「え?」
「あ、いや」
「俺たちのアソコが気に入らなかったのか?!」
「違う!」中学生特有の、何でも下ネタに関連付ける習性が発動した瞬間だった。
こんな状況で気楽なものだと今でさえ思う。

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bronco

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