この怖い話は約 3 分で読めます。

じいちゃんは、頭は白髪だったけど足腰はピンとしていて、背が高くてガハハと言って僕の頭をぐしゃぐしゃに撫でたりして、それが痛かったり恥ずかしかったりするので僕はその手から逃げ回るようになった。
ばあちゃんは小さな体にチョンと夏みかんが乗ってるような可愛らしい頭をしていて、なにかを持ち上げたり、布巾を絞ったりする時に「エッへ」と言って気合を入れるので、それがとても面白く、こっそり真似をしていたら本人に見つかって、
怒られるかと思ったけれどばあちゃんは「エッヘ」と言って本物を見せてくれたので、僕はあっというまに好きになってしまった。

514 先生 前編  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2009/08/21(金) 23:03:29 ID:YUHlb2rI0
シゲちゃんは名前をシゲルと言って僕と同い年の男の子で、昔もっと僕が小さかったころにこの家に遊びにきた時、僕を子分にしたことを覚えていて、僕はさっぱり覚えていなかったけれどまあいいやと思ったので子分になってやった。
ヨッちゃんは名前をヨシコと言ってシゲちゃんの二つ年下の妹で、目がくりくりと大きくオカッパ頭の元気な女の子で、僕の顔や服の裾から出ている体の色が白いのを見て、トカイもんはヒョロヒョロだと言って馬鹿にするので、
そうではないことを証明するのに泥だらけになって日が暮れるまで追いかけっこをする羽目になった。
トカイもん。

田舎にきてまず感じたのが、この言葉のむずむずする肌触り。
僕にはけっしてトカイの子などという認識はなかったのであるが、この小さな村の子どもたちからすると、テレビのチャンネルがNHKのほかに三つ以上映るというだけでそれは十分トカイの条件を満たしてしまうようだった。
シゲちゃんはそのトカイもんをさっそく地元のワルガキ仲間に引き合わせてくれたので、とにかく毎日ヘトヘトになるまで僕らは一緒に駆け回り、泳ぎ回り、投げ回り、逃げ回った。
小学生最後の夏休みなのだ。アタマが吹っ飛ぶくらい遊ぶのは、子どもの義務なのである。タカちゃんやらトシボウやらタロちゃんなんかと仲良くなった僕は、どいつもこいつも揃って足が速いこと、そしてまた並べてフライパンで焼いたように色が黒いことにいたく感心した。

なるほど、「トカイもん」と自分たちを区別したくなるのも分かる気がする。僕の周囲にいた子どもたちとは少し違っている。
朝早くから虫カゴと網を持って山に入ったかと思うと、ヒグラシが鳴きやむまで下界に下りてこず、いざ帰ってきた時には手作りの大きな虫カゴが満タンになっているのだけれど、その夜それぞれの親に早く家に帰らなかったことについてコッテリ絞られた後だというのに、
次の日にはまた颯爽と朝早くから虫カゴと網とを持って山に駆け上って行く、という具合だ。
その中でもシゲちゃんはとびきりのやんちゃ坊主で、それになかなかの親分肌だった。

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