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518 先生 前編  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2009/08/21(金) 23:16:13 ID:YUHlb2rI0
頭がくらくらしたのと、ビビッたのとで森の奥へ行ってみたい気持ちは引っ込み、一目散にシゲちゃんたちの後を追いかけた。

それから三日くらい僕らはひたすら川で泳ぎ回っていた。とにかく暑かったからだ。川は海よりも体が浮かななくて、しかも流れがあるので岸に上がった時にドッと疲れる感じ。
その川には小さな橋が架かっていて、その上から飛び込むのが僕たち子どもの格好の度胸試しになっていた。
僕も泳ぐのは得意だったし、川底も深かったのでしばらく躊躇したあと見事に頭からドブーンとやってやった。

プシューッと水を吹きながら他のみんなと同じように水面に顔を出すと、橋の欄干の上にプロレスラーよろしくシゲちゃんが立っているのが見えた。
「見てろ」と言ってシゲちゃんはみんなの視線を集めながら宙を舞った。歓声と光と、水に溶けていく体温。太陽の中に僕らの夏があった。
そうしているうちに、やがて僕が一人で遊ばなくてはいけない日がやってきた。
シゲちゃんたち六年生がみんな二泊三日で林間学校に行くのだ。僕も連れて行って欲しかったが、学校行事なのでどうしても駄目らしい。リュックサックを背負って朝早くに家を出るシゲちゃんを見送って、今日からの三日間をどうしようかと考えた。
家は農家だったのでおじさんとおばさんとじいちゃんは朝ごはんを食べたあと軽トラに乗って仕事に行ってしまう。ばあちゃんがゴトゴトと家の仕事をする音を聞きながら僕は持ってきていた宿題を久しぶりに開いた。

広い畳敷きの部屋で大きな机の真ん中に頬杖をつく。何ページか進むともう飽きる。宿題なんて夏休み最後の三日くらいでやるものと決まってる。
それまでにやらなくてはならないほかのことがあるんじゃないのか? エンピツがコロコロと転がる。縁側の向こうの庭には太陽がさんさんと照っていて、こちらの部屋の中がやけに暗く感じる。
寝転がったり、宿題を進めたり、また休んだりを繰り返していて、ふと時計を見ると朝の九時。まだ九時なのだ。お昼ご飯まで三時間以上ある。ダメだ。どうにかなってしまう。

519 先生 前編  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2009/08/21(金) 23:18:59 ID:YUHlb2rI0
僕は一人で行ける場所を考えた。いつもみんなでは行かない場所がいいな。図書館とか。
あれこれ考えていると、ふと頭の隅に鎮守の森の神社が浮かんだ。そしてカンバツされていない木々の下の翳りの道。その先にまだ道は続いていた。
またむくむくとその先へ行ってみたい気持ちがわき上がってきた。あの森の中では萎えてしまったその気持ちが、もう一度強くなってくる。
ひとりでも行けるさ。どうってことない。そうだ。午前中に、今すぐに行こう。日の高いうちならそんなに恐くないはずだ。

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