Categories: 師匠シリーズ

怪物 「結」

この怖い話は約 3 分で読めます。

86 師匠コピペ19 sage 2008/10/27(月) 10:57:03 ID:SNTEH34B0

302 怪物 「結」上 ラスト  ◆oJUBn2VTGE ウニ では今夜また  2008/08/03(日) 03:08:43 ID:ScuN9+/G0
転がって仰向けに姿勢を変えてから、今日あったことを順番に思い出してみる。
2度目の『母親を殺す夢』。学校での情報収集。円形の地図の完成。先輩を怒らせ
たこと。中心地の聞き込み。無駄足。買ったままの鋏。鋏の消えた街。間崎京子と
の電話……
(そういえば、先輩の部屋にも鋏があったな)
先輩がサイ・ババの真似をしていたときに手に持っていた鋏。テーブルの上に無造
作に置かれていたものだったけれど、手のひらから(私には服の裾からにしか見え
なかったが)宝石や灰を出してみせるという奇蹟の再現をするのに、隠しにくい鋏
は適切な物だっただろうか。消しゴムやなんかの方が、よほど上手く出来るだろう。
(新品に見えたけど、あの鋏もなんとなく買ったのかな)
何故それが要るのか、深く考えもしないで……
ふと、電話で注意した方がいいだろうか、と思った。
いや、駄目だな。夕方に怒らせたばかりだし、こんなに遅い時間に電話してまた変
な話をしたのでは、きっとまともに聞いてくれないだろう。
あれ? そう言えば、私もまだ持ってたな、鋏。
机の引き出しのどこかに、昔から使ってるやつがあるはずだ。
あれも捨てて来た方が良かったかも。
あ……でも眠いや……
明日にしよう……
明日に……

眠りに落ちた。

87 師匠コピペ20 sage 2008/10/27(月) 10:59:20 ID:SNTEH34B0
324 怪物 起承転「結」下  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2008/08/03(日) 22:31:29 ID:ScuN9+/G0

  暗い。暗い気分。泥の底に沈んでいく感じ。
  私は、やけに暗い部屋に一人でいる。
  散らかった壁際に、じっと座ってなにかを待っている。
  やがて外から足音が聞こえて私は動き出す。玄関に立ち、ドアに耳をつけて息
  を殺す。
  暗い気持ち。殺したい気持ち。  
  足音が下から登ってくる。
  私はその足音が、母親のだと知っている。
  やがてその音がドアの前で止まる。ドンドンドンというドアを叩く振動。
  背伸びをして、チェーンを外す。
  そしてロックをカチリと捻る。
  手には硬い物。私の手に合う、小さな刃物。  
  ドアが開けられ、ぬうっと、青白い顔が覗く。
  母親の顔。見たことのない表情。見たくない表情。
  ドアの向こう、母親の背中越しに月。真っ黒いビルのシルエットに半分隠れて
  いる。
  どこかから空気が漏れているような音がする。それは私の息なのだろうか。
  いや、私の身体にはきっとどこかに知らない穴が開いていて、そこから隙間風
  が吹いているんだろう。  
  私は入り込んでくる顔に、話しかけることも、笑いかけることも、耳を傾ける
  こともしなかった。
  ただ手の中にある硬い物を握り締め、暗い気持ちをもっと暗くして。

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