Categories: 師匠シリーズ

怪物 「起」

この怖い話は約 3 分で読めます。

522 師匠コピペ1 sage New! 2008/07/07(月) 21:22:51 ID:Qa02XDyg0

654 怪物  「起」承転結   ◆oJUBn2VTGE ウニ 2008/07/06(日) 21:18:08 ID:JJl4aZ230
京介さんから聞いた話だ。

怖い夢を見ていた気がする。
薄っすらと目を開けて、シーツの白さにまた目を閉じる。鳥の鳴き声が聞こえない。
息を吐いてから、ベッドから体を起こす。静かな朝だ。どんな夢だっただろうと思
い出しながら記憶を辿ろうとする。すると「スズメは魂を見ることができる」とい
う話がふと頭に浮かんだ。どこかの国の伝承で、スズメは生まれてくる前の人間の
魂を見ることができるという。朝、スズメがさえずるのはその生まれてくる魂に反
応しているのだと。その魂がやってくる場所が空っぽになっていると、魂を持たな
い子どもが生まれて来る。そんな子どもが生まれる朝にはスズメはさえずらない。
だから、スズメの声の聞こえない朝は不吉さの象徴だ。
カーテンを開けると2階の窓から見える家並みはいつもと変わらない姿で、慌しい
一日の始まりの息吹がそこかしこに満ちている。
そう言えば今日は何曜日だっただろう。
目を閉じて、一秒数えたら、他愛もなくありふれた土曜日の朝でありますように。

その日、つまり憂鬱なる月曜日。学校への通学路の途中、道行く人々の群れの中で
ふと足を止めた。
視覚でも、聴覚でも、嗅覚でもなく、まだどれにも分かれない未分化の感覚が、街
の微かな違和感をとらえた気がした。
私にぶつかりそうになったサラリーマンが舌打ちをしながら袖を掠めていく。
色とりどりのたくさんの靴が、それぞれのステップで私を追い越していく。
その雑踏の中で私は、ギギギギギ……という古い家具が軋むような音を聞いた気が
した。
蠢き続ける人間の群れの中で身を固くする。

523 師匠コピペ2 sage New! 2008/07/07(月) 21:23:25 ID:Qa02XDyg0

655 怪物   ◆oJUBn2VTGE ウニ 2008/07/06(日) 21:21:13 ID:JJl4aZ230
夏が一瞬で終わったような肌寒さを感じた気がした。アスファルトから立ち上る、
降りもしない雨の匂いを嗅いだ気がした。
けれどそのどれもが幻だということもまた同時に感じた。
なにか本質的なものがそれらのヴェールの向こうに潜んでいるような、得体の知れ
ない嫌悪感が身体にまとわりついてくる。
道端のゴミ捨て場に集まっていたカラスが鳴いた。一羽が鳴くと他のカラスたちに
も伝播するように鳴き声が波のように広がる。
そばを通る何人かの人間がそちらを見た。
その声は求愛でも、縄張りを主張するものでもなく、ただ”何かを警戒せよ”という
緊迫した響きを持っている気がした。
けれど誰もそれに必要以上の関心を示さず、足を止める人はいない。
私もまた形にならないどこか遠くにあるような不安感を胸に抱きながら、それを振
り払い、学校への道を急ぐのだった。

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