この怖い話は約 4 分で読めます。
怖い夢を見ていた気がする。
目覚まし時計を止め、あくびを一つしてから身体をベッドの上に起こす。
527 師匠コピペ6 sage New! 2008/07/07(月) 21:26:01 ID:Qa02XDyg0
659 怪物 ◆oJUBn2VTGE ウニ 2008/07/06(日) 21:41:16 ID:JJl4aZ230
いつもはエンジンの掛かりが遅い私の頭が、今は急速に回転を始める。
思い出せ。
どんな夢だった?
暗いイメージ。嫌な。嫌なイメージ。怖いイメージ。
テーブルに置いてあったノートを広げ、ペンを持つ。
コツ、コツ、コツ、と叩いてからやがてガクリとその上に突っ伏す。
駄目だ。
忘れてしまった。
やけに静かな朝だ。イライラする。リズムがない。リズムさえあれば思い出せたの
に。スズメだ。スズメはどうして鳴かないんだ。
いきなりドアをノックする音が聞こえた。
ドキッとする。するより早く、胸の中に、サッと赤黒い暗幕が掛かった気がした。
「煩いな、いま起きるよ!」
自分でも思わぬ大きな声が出た。
その向こうで、わずかに開いたドアから母親の驚いた顔が覗いていた。
その日の朝ご飯どき、母親に乱暴な言葉遣いを説教されて一層不機嫌になった私は、
学校でも朝からムカムカして気分が悪かった。
こちらに話しかけたそうな高野志保の遠慮がちな視線にもイライラさせられた。
水曜日の2時間目は美術だ。さっそくエスケープした私は、人の来ない校舎裏に直
行した。
煙草でも吸わないと、やってられない。
深く息を吐いて、白い煙が青い空に溶けていくのを見ているとようやく気分が落ち
着いてくる。
昨日から今朝にかけて起こったことを一つ一つ順番に考えてみた。
528 師匠コピペ7 sage New! 2008/07/07(月) 21:26:38 ID:Qa02XDyg0
661 怪物 ◆oJUBn2VTGE ウニ 2008/07/06(日) 21:45:25 ID:JJl4aZ230
いや、始まりは昨日ではない。怖い夢を見たという漠然とした記憶は、かなり前か
ら始まっていた。この夏が始まるころ、いやあるいはもっと前から、緩やかにそれ
は私の日常を侵食し、そしてこの街の中に染み込んでいたのかも知れない。誰にも
その意味を気づかれないままに……
3本目の煙草を箱から出した時だった。
突然キーンという耳鳴りに襲われた。まるで、周囲の高度が劇的に変わったかのよ
うだった。
(まずい。なにか起こる)
そう直感して、とっさに姿勢を低くする。全身を恐怖が貫いた。
けれどいつまで待っても何も起こらなかった。
恐る恐る身体を起こして、周囲を見回す。
地面にも、校舎の壁にも異変はない。空を見ても、さっきとなにも変わらない。入
道雲が高くそびえているばかりだ。
胸はまだドキドキしている。
そういえば耳鳴りがしたあの瞬間、どこか遠くで雷のような音が鳴ったような気が
する。目を閉じて耳を澄ましてみたが、今はもう何も聞こえない。
耳鳴りもいつの間にかおさまっていた。
「なんなんだ」
自分に問いかけて、それから出しかけた煙草を箱に戻す。授業に戻ろうかと考えて、
やっぱりやめることにした。さっきの耳鳴りがなにか反復性のもののような気がし
て、とっさに逃げ場のない教室には戻りたくなかったのだ。次に学校から抜け出し
てみようかと思った。それは素晴らしい思いつきに感じられて、いてもたってもい
られなくなり、学校の敷地から出るために塀をよじ登ることさえ苦にならなかった。
誰にも見つからず抜け出すことに成功した私は、川の方に行ってみるか、それとも
図書館に足を伸ばすか思案した。