Categories: 洒落怖

老婆と娘

この怖い話は約 3 分で読めます。

完全な闇の中を歩いてしばらく、仕事のことや元彼女のことなどを考えていると遠くに灯が見えた

ゆらゆらと揺れながら形を変え、ゆっくりと近づいてきたそれは提灯を手に持つ老婆だった・・・

遠く都会から離れ、ひとり幻想的な世界で妄想にふけっていた自分はハッと我に返り、その老婆にこの近くに宿がないかを聞いてみた・・・老婆は腰が曲がり、うつむいたままの姿勢で何も言わず、老婆が来た方向を指差すと、そのままゆっくりと通り過ぎて行ってしまった・・・俺は一言、ありがとうございます と言い、老婆を見送った・・・
街灯に照らされた老婆の背中は小さく、腰からは白いタオルのようなものがぶら下がっていたが、やがて闇に消えた

いつの間にか砂利道になっていた農道をしばらく歩くと、光が見えた
目を凝らすと二階建ての家屋のようである・・・さっきの老婆の教えてくれた宿だろうか・・・?
周りを囲む山々はまるで闇の壁のように自分を覆いつくそうとしている・・・その中にポツンと揺らめく灯篭の灯・・・
ジャリジャリと音を立てて歩く速さは、無意識のうちに徐々に増していった

929 本当にあった怖い名無し sage 2012/04/10(火) 00:26:22.76 ID:Ruo2XUQR0
3/11

木造の家屋だ・・・門には確かに宿と書いてある
しかし作りは結構な時代を感じさせる・・・まるで江戸時代の宿場町にある宿屋のようだ・・・
庭にある灯篭と玄関の裸電球だけが、闇夜にあって時代を倒錯させる要素としては十分過ぎる効果を演出していた
自分はふと写真を撮ろうと、カメラのファインダーを覗くと玄関がガラガラと音を立てて開き、中から宿主と
思われる婆さんが出てきた・・・

あ・・・すいません、予約してないんですが今日って泊まれますか・・・?

婆さんは、ジロジロとこちらを見ると、はいどうぞ・・・と、自分を宿内に案内してくれた
部屋に通され背負ってたリュックとカメラを置くと、宿が見つかった安堵感と長旅の疲れでゴロンと畳の上に
寝転び、天井を見ながらあれこれ考えていた

ふと、入口の襖の向こうから声がした・・・若い女性の声だ・・・

自分は驚いて飛び起きると襖がスッと開き、和服の女性が会釈をしてきた
(あ、この宿の娘さんかな?)と思い、お世話になります、とこちらも会釈をし、入れてくれたお茶をいただいた・・・
清楚で黒髪に落ち着いた雰囲気・・・和服がよく似合っている・・・
こんな山奥にも綺麗な人がいるんだな・・・と感心しながらも、他愛の無い世間話を交わして娘さんは部屋を去った

夕食を用意するのに時間がかかるとのことなので、先にお風呂をいただいた

民宿の風呂なので小さめだが湯量と温度は申し分ない・・・窓から見える星空も都会の喧騒を忘れさせてくれるには十分だった・・・そして気が付くとさっきの娘さんのことを考えている自分に気が付いた・・・
まいったな、一目惚れか・・・? 失恋旅行なのに・・・ま、いっか・・・
湯から上がり、鼻歌交じりで部屋に戻るとすでに夕食が並べられていた・・・ん?随分と豪勢だな・・・

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