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373 刀 ラスト  ◆oJUBn2VTGE ウニ 2009/10/03(土) 00:00:05 ID:o7OYvvFV0
「金、もらうの忘れた」
それどころじゃないでしょう。
そう言い返して、僕は全速力でその立派な家の門から離れ始めたのだった。

後日。
小川調査事務所のフロアで僕と師匠は上機嫌の所長と向かい合ってた。
「倉持さんからお金が入ったよ」
報告を聞いて諦めていたそうだが、昨日本人がやって来て規定の料金の十倍を超えるお金を置いていったのだという。
僕と師匠は顔を見合わせた。
「取り乱して悪かったって。あの時のことは他言無用に願うってさ。そりゃまあこちらには守秘義務ってものがあるからね。もちろん、と答えといたよ」
口止め料も含まれているわけか。確かにへたをすると殺人未遂だからな。
思い出していまさらゾッとする。
「ああ、それからこれ。きみたちにと」
デスクの下から大きな箱を取り出して来る。桐製の立派な刀箱だった。
開けると中には目算六十センチ弱の刀剣が一振り入っている。脇差だ。
「え? これをどうするんですって?」
動悸が早くなってきた。
「だから、くれるって」
凄い。こんな高価なものを。
ついていた登録証と保存鑑定書を読みながら興奮を抑えられなかった。
師匠は笑って「もらっとけ」と言った。僕に譲ってくれるらしい。価値が分かっているのだろうか。
「あと最後に伝えてくれって。……『わかりました』ってさ。なんのことだ」
師匠はそれを聞いて、嬉しそうな顔をした。ひょっとして脇差を抱える僕よりも。
その僕は脇差の柄のところに目立つ傷があるのに気が付いた。
あの時の灰皿か。
しっかりしてるな。
倉持氏のいかめしい顔を思い出して、なんだかおかしくなった。

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bronco

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