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「痛っ!!酷いよ・・・酷いよ亮ちゃん」
亮が呆然と僕を見つめていた。
「ご、ごめん・・・本気じゃなかったんだよ・・・」
亮の目は何処か怯えている様だった。
どうやらチョット脅かしてやろうってくらいの気持ちだったらしい。
「でも、たっくんが悪いんだぞ。素直に渡さないからっ!!」
亮は僕の所為にした。
僕は全然悪くないのに。
悲しかったけど、泣かなかった。
泣いたら負けだから。
痛くて、悔しくて、情けなかった。
でも、この時ペンダントなんてどうでもよくなったんだ。
亮は僕を傷つけてまでこれを欲しがってる。
僕はこんな物の為に人を傷つける気なんてさらさらない。
おかしいのは亮だけど、こんな物要らない。
僕が辛い思いをしたのも、怪我したのもペンダントの所為だもの。
「いいよ・・・そんなに欲しいんだったら、そんな物くれてやるよ・・・」
僕は釈然としない所はあったものの、潔くそう言った。
「ほ、ホント?ホントにホント?」
亮は少しビックリしてる様だった。
失敗したかも知れないな。
亮が、自分が悪いと思ってる今なら、何とか巧く僕の物に出来たかもしれなかった。
「いいよっ!!何回も言わせないでよ!!」
「あ・・・ありがとう・・・」
亮はばつの悪そうな顔で僕の目を上目遣いで見ていた。
「その代わり・・・今度何か見つけたら僕にくれよ」
「うんっ、うんっ、約束するよっ!!」
亮がにっこりと笑った。
こんな約束、コイツは明日になったら忘れるんだ。
だけど僕は忘れない。
そしたらその時言ってやるんだ。
あの時、ペンダントを譲ったじゃないかって。
僕に怪我させた事をみんなにばらしてやるぞって。
その後、また奥へと向かった。
亮は上機嫌だった。
途中何度も振り返っては、僕に良い奴だの、今度おごってくれるだのと、機嫌を取っていた。
僕はそんな亮の態度をまるで人ごとの様に流す。
僕のそんな態度に気付かない亮が鬱陶しく思えた。
あんな事があった後だから、何もかも色あせて見えた。
蜘蛛の巣が顔にかかってもなんて事はないし、壁に掛かった絵だって、別に動き出す訳でもない、ただの絵だ。
何もかもつまらなくなって、今はただ帰りたかった。
早く帰ってテレビが見たいなぁ。
今日の夕ご飯はなんだろうなぁ。
適当に亮の後をついて行くだけ。
と、前を行く亮が大声を上げた。
「おぉいっ!!あった、あったぞ、お宝!!」
飛び込んできた声に、急に現実に戻された。
現金なもんだよね。
でも、お宝って聞けば機嫌も治るよ。
パッと駆け出し、亮に追いつく。
「あ、駄目だよ!!気をつけて!!」
ふと足下を見ると、そこにはぽっかりと大穴が開いていた。
お宝はその奥の壁に掛けてあった。
鈍い光を放つ、赤銅色の蛙のペンダント。
目の部分には黒光りする石がはめ込まれていた。
黒曜石とか言うやつだろうか。
「・・・よかったじゃんか。ほら、お宝見つけたよ」