Categories: 洒落怖

ダメだ

この怖い話は約 3 分で読めます。

まだゴールはずっと先のはずだから、おじさんだって車が無いと大変なはずだ。
迎えに来たんじゃないのかな…?じゃあ何のためにこんな暗闇に電灯も持たず一人でいるのかな…?

もしかして人間じゃ、ないのかな…?
急にやばい気がして立ち止った。

と同時、人かげがこっちに向かって走ってきた。
俺は『ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!!!』と泣きわめきながらもと来た道の方へ走りだした。

泥にまみれた靴の中で足が滑り、顔からずっこけたがそれどころではない。
足引きずってでも人かげから離れようとした矢先、
人かげが「○○とこの!!」(○○は俺の名字)と叫んだ。

「○○とこのガキじゃないか。どうした大丈夫か」
恥ずかしながら、俺は失禁して腰砕けになっていた。
真っ暗なので顔がはっきりとは見えないし、まだ面識も広くないのでよくわからないが、
俺の名前を知っていることから察するに、地域のおっさんの誰かのようだ。
張りつめた緊張が色んな形でブチ切れたので、俺は耐えられずおんおん泣いた。

619 本当にあった怖い名無し sage 2010/04/24(土) 23:54:18 ID:Y/Q9tGBt0
「まあ帰ろう。親御さんも心配してるだろう」
おっさんは俺の手を取って立たせ、失禁も気にせずおぶってくれた。なんと幸せなことか。
おっさんの背中に安心しきりだったが、ふと思い立って肩越しに聞いてみた。
『おじちゃん、車も電気も無いの?大丈夫?』

「あー… ダメだダメだ」
おっさんが答えた。
変な返事だなwwダメってダメだろwww
緊張の糸が切れた有頂天の俺には何か遠い世界の声に聞こえた。他人事みたいだ。

『おじちゃんだけ来てくれたの?他のみんなは?』
「あー… ダメだよそれ」

噛みあわねぇwww どういう答えだよwww
あれ?山側に向かって歩いてる?www

『おじちゃん、こっちは…』
「あっ ダメだよダメ!
「ダメダメ! もう聞くなっ、きくなっ、きくなっ
 きくなっあ゙あ゙あ゙あ゙あああ!!!!」

おっさんの声が伸びたテープみたいなモァンモァンの声になって、
肩越しに急に振り向いた顔は目の前で見ても真っ暗闇だった。
俺の記憶はそこで飛んだ。

621 本当にあった怖い名無し sage 2010/04/24(土) 23:55:11 ID:Y/Q9tGBt0
俺が目を覚ましたのはその日の深夜。
心配して探しにきた親に泣きながらビンタされて起こされた。
俺は山道から谷側に少し入った草むらに倒れていたようだ。

一番怖かったのは地域の連中が一人も俺を探しに来ていなかったことだ。
新居を引き払い、俺達一家は引っ越した。

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