Categories: 洒落怖

婆さんを捜して

この怖い話は約 3 分で読めます。

オギャー オギャー

親父はボソッと「狢(むじな)だ」と言った。道を迷わせる為に
人の赤ん坊の真似をしているのだという。泣き声のする所へ向
かっても決して辿り着くことはなく、永遠に彷徨い続けるらし
い。ほどなくして俺達は池の脇に出た。ここまで来れば山頂は
近い。

親父が小石を拾えと言うのでいくつか拾った。池を通り過ぎる
まで、水面に小石を投げ続けるのだという。俺は何でだ?と思
って聞いてみた。

614 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:39:22 ID:xfptnP3/0
6/11
「今夜は満月だからな。池に映る月を使って河童が化かしやが
るんだ。あいつらは怪しい術を使うからな」

気が付くとさっきまで雲に隠れていた月が顔を出した。俺はよ
くわからなかったが親父に言われる通り、小石を投げながら池
の脇を通り過ぎようとした。と、急激に気分が悪くなってきた。
体が熱い。目まいがする。

親父は「まずい!」と言って俺を抱え、足早に池の向こうまで
遠ざかると木の陰に隠れ、持ってきたペットボトルの水を俺の
体にかけた。俺はわけが分からず親父に尋ねると、河童に攻撃
されたのだと言う。いつの間にか親父が置いた鳥居がブスブス
と煙を上げ、みるみる焦げてゆく。

「あいつらは遠くからでも人間を殺せるんだ。人の血を沸騰させ
て殺すんだ。あいつらに近寄っちゃなんねぇ」

俺はありったけの水を飲まされると、少しして落ち着いた。そ
して親父と猛ダッシュで山頂へと走り抜けた。ここまで婆さん
の姿は無かった。他の村人達が見つけてくれていればいいが、
安否が不明なので俺達はとりあえず山頂まで行ってみることに
した。

そこは地獄だった。

617 本当にあった怖い名無し sage 2010/03/05(金) 04:42:03 ID:xfptnP3/0
7/11
おびただしい数の亡霊達が蠢き、物凄い瘴気が辺りを包んでい
た。なぜこんなにたくさんいるんだ?とてもじゃないが、俺達
二人でどうにか出来るレベルを超えている。すると親父がこう
言った。

「たぶん婆さんが集めたんだ」

俺はそんな馬鹿な・・・と思ったが確かにそれしか考えられない。
元々、色々と不思議な術を使う人だった。亡霊を集めることな
ど簡単なのかも知れない。普段はそんな事はしないが、認知症
が進行して無意識にそれらのちからが暴走しているのかも・・・

「こりゃぁ無理だ・・・」

親父が諦め気味につぶやいた。俺もそう思った。幸い他の村人
はまだここには来ていない。まぁ来れる人も少ないだろうが・・・
ふと高台に目をやると、白装束の小柄な人間が動いてるのを見
つけた。婆さんだ・・・一心不乱に何かを祈っているようだった。

あの亡霊の群れを突破して婆さんに近づくことは不可能だ。し
かも婆さんは気がふれた状態なので、何をするか分からない。
俺は親父と相談して朝までここで待つことにした。日の出まで
あと1時間程度だった。

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bronco

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