Categories: 洒落怖

葬る

この怖い話は約 4 分で読めます。

666 コピペ 4/8 sage 2012/08/17(金) 23:57:11.26 ID:kRa6Fvkt0
507 :415[]:2012/03/15(木) 02:02:43.33 ID:4pvQLdB90
ババアは庭に出してもまだ尚何か叫んでいて、
家は誰が守る?とか、通帳はどこだ?とかあとはほとんど訛りが強くて聞こえなかったがとりあえず大いに取り乱していた。
弟だけは冷静に携帯を開き、電波が全く通じないこと、恐らく津波が来ること、車で逃げると死ぬかもしれないこと、
母と父は内陸部にいるので恐らく無事であろうことを淡々と俺に説明した。
この時点で恐らく15:00ころ。
家の脇の道路を見ると車がありえないほど渋滞していて、車の隙間を縫うように下から人が避難してきていた。
ここでババアがまた大声を出す。
「遺影もってこ!!(遺影を持って来い)」
その後、通帳とタンスの金もだ!とまくし立てるように言うと俺に指を差した。
俺「そんな時間ない!山に上がるぞ!」
弟「裏から行こう。ばあちゃん俺が担ぐから兄は道確保して」
ババア「おらはいかねえ!爺さん置いてくのか!?財布も忘れだ!!」
ババア、頑として譲らない。
そこで俺もちょっと油断した。うちは高台にあるから津波なんてここまで来ないだろ。
ババアを黙らせるためには仏壇の写真をとってくればいいんだ。
俺は弟に先にいけ、ばあさんは俺が連れて行く。と言い、再び家に。
余震が続いていてガラス片がバリバリいいながら降っていた。
俺が倒れた仏壇の下から遺影を引っ張り出していると、なぜか家の仲間でついてきたババアが
「それでねえ!大きいのだ!上のだ!」と、梁に立てかけてある、肖像画くらいの大きさの爺さんの遺影をアゴをしゃくって挿した。
梁ははしごを使わなければとても手が届かない。
俺もだんだん冷静になって頭に来始めて、
「そんなもん無理だ。自分で取れ!」と怒鳴った。
家の外から
「来たぞー!!」と誰かが叫ぶ声が聴こえた。

667 コピペ 5/8 sage 2012/08/17(金) 23:59:19.16 ID:kRa6Fvkt0
528 :415[]:2012/03/15(木) 02:19:03.89 ID:4pvQLdB90
また余震だと思った。
とんでもない音で地鳴りが鳴り始め、外では逃げろ!とか早くしろ!
とか、一人ではなく大勢が叫んでいた。
ただならぬ気配に外に飛び出した。
坂の下、海のほうを見下ろすと砂浜がなかった。真っ黒い墨汁のような水が防波堤ぎりぎりまで満たされていた。
「津波だー!!」と、誰かが叫んだ。
俺「ばあさん!だめだ!もうダメだ!津波が来た!写真持ったべ?逃げるぞ!」
ババア「財布はどこだ!?」
坂の下の方では声をかき消すくらいバリバリと雷と台風でもいっぺんに来たような轟音が鳴り響いていた。
俺は問答無用でババアの腕を掴んで裏口へと走った。
横目で坂の下を見ると、幼馴染の実家に波に流された軽トラが突き刺さっていた。
俺「ばあさん!弟は!?先に行ったか!?」
ババア「財布とってねえ!おめえ、写真どこさやった!?おい!」
ババアも俺に渾身の肩パンを繰り出しながらずっと叫んでいた。ずっと後ろの方で悲鳴が聞こえていた。
裏口を回って山道に出る。少し見通しのいいそこに立つと、
うちの二軒下の家に大量の瓦礫がぶつかってドリフのコントのように押し流されているところだった。瓦礫の中に赤い服着た人間が混じってた。
どう考えてもここまで来る。それもあと数十秒で。
あ、死ぬの?と漠然と思った。ぽかんとしている俺の肩をババアが突き落とすように押した。
ババア「写真どこさやった!おら位牌ももってねえが!!おめえ早く取って来い!!」
ババアは今津波に飲み込まれようとしている家に戻れと、俺に言っていた。
俺はそこで我に返って、急いで後ろの急斜面の何の舗装もされてない山を四つん這いで登った。
ババアが俺の脚を掴んで引きずり下ろす。

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