Categories: 洒落怖

まとわりつく女

この怖い話は約 3 分で読めます。

見た瞬間に物凄く動悸が激しくなったのが分かった。
やっぱり普通じゃなかった、というより異常だった。
真っ黒だった、暗いからとかじゃなく、目以外は塗り潰したように黒く、耳元には有るべき物が無かったように見えた。

思わず「ウオワァ」と叫んだ瞬間、女はゆっくりこちらを振り向いた。
少し遠くから照らす薄暗い街灯の明かりが女の顔を照らしたが、やはり見間違いとかではなかった。
金縛りとかではないが、体が小刻みに震え動けなかった。
しばらく向き合った状態になったが、見る見るうちに女が顔を歪ませた。
俺を見ながら笑った気がした。

397 本当にあった怖い名無し 2012/08/13(月) 18:12:20.71 ID:E3O1NCwF0
次の瞬間には全力で走っていた。
実家に向け一心不乱に。
後ろは絶対に振り向けなかった、俺が走りだしたと同時に、まるで歩調を合わせるように「ペタペタ」と足音が俺を追って来ていた。
結構足には自信あった、だが、いくらペースを上げても背後からの足音は無くなる事は無かった。

涙を流し、どれだけ息が上がろうとペースを落とす事だけは出来なかった、直感的にこれはヤバいと考えていた。
体力の限界が見えはじめた時、ようやく実家が見え、俺は飛び込むように実家へ入った。
夜中だが兄は起きていたから鍵を開けてくれていた。

俺はすぐに施錠しチェーンをかけ、玄関のドアスコープから外を見渡したが女はいなかった。
俺はそこでやっと安堵し、玄関で座り込んでいた。
すると兄が「どうかした?」と聞いて来たが、息を切らし、話す元気も無い俺は「何もない」と言うと、兄は「あっそ、なら俺寝るから」と2階へ上がって行った。

しばらく座り込んで、気持ちが落ち着いて来た俺は、水でも飲むかと立ち上がろうとした時だった。
不意に肩を叩かれ、兄と思い「何?」と振り返ると兄の姿は無く、変わりにあの女が薄ら笑いを浮かべこちらを見ていた。

399 本当にあった怖い名無し 2012/08/13(月) 18:14:24.75 ID:E3O1NCwF0
そこからの記憶は無い、次に目が覚めた場所は病院だった、どうやら小便垂れ流して、玄関で泡を吹いていたらしい。
この歳で漏らしはないと思ったが、何故か仕方ないと自分自身に言い聞かせた。

親は心配していたが、何の異常も無く、次の日には実家に帰らされた。
帰ってからは昨晩の出来事を思い出していた、心霊スポット等に行った覚えもないし、そもそも性格的に慎重だから危ない所にも絶対に近づいたりしない、なのに何で俺が?とばかり考えてた。
幻覚を見たのか?とも考えた、俺は精神的にかなり弱い、ストレスが溜まるとよく幻聴が聞こえたりする、だが、今回は明らかに今までとは別物のような気がしていた。

そうは考えてはいたが、俺では答えなんてだせないし、心霊現象を信じてないわけではないけど、自分自身が経験するのとでは全く違う、受け入れる事は中々出来ない、それに何はともあれ済んだ事だ、気にしないようにした。
だけど、その考えは甘かったのを思い知る事になった。

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bronco

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