Categories: 洒落怖

巨木

この怖い話は約 3 分で読めます。

295 278 巨木(3/5) sage 2009/06/23(火) 00:19:58 ID:yWUlqaRb0
じっと聞き耳を立てる。何かの合図だろうか?
だが、その木を叩くような音は一つ鳴ると、別の場所からまた一つ。
それが鳴り終わるとまた別の場所からまた一つという具合に
止まることなく聞こえてくる。
その音が俺のいる位置に向かって徐々に狭められていることがわかった。

この場所は森の入口から1km以上離れているはずだ。
今から急いで引き返しても車を停めた場所まで戻るころには、
完全な闇に飲み込まれてしまうだろう。

どうしてこんな時間にこんな所へ来てしまったんだろうと後悔しながら、
鳥肌が立ち、嫌な汗が噴き出すのを感じた。

音はなおも範囲を狭めながら俺に近付いてくる。
もし音の主が人だとしても、どうやら5~6人ではきかないようだ。
正確な場所はわからないものの、10人程度はいそうな気がする。

俺は巨木を観察する間もなく今、来た道を急いで帰り始めることにした。
来たときに感じていたのは「この曲がり角の先にクマがいたらどうしよう?」と
いうことだった。

しかし今は違う。
「この曲がり角の先に音を立てている相手がいたらどうしよう?」
そうした考えが頭に浮かびそうになるのを必死に振り払いながら、
黙々と来た道を戻っていく。
その間も絶えることなく木を叩く音が俺に近付いてきている。

ふとある曲がり角の手前に差し掛かった時だ。
その先から物凄く嫌な気配を感じて先に進めなくなってしまった。

296 278 巨木(4/5) sage 2009/06/23(火) 00:20:39 ID:yWUlqaRb0
いや気配ではない、ほんの小さな違和感だったのかもしれない。
それとも草の擦れるようなわずかな音だろうか?
何かがいる! だが見てはいけないような気がする。
しかし、音は確実に範囲を狭めながら俺に近付いてくる。

後ろを振り返る。数分前に自分がいた辺りから一際大きな音が聞こえてきた。
もう迷っている暇はない。どちらにしろ狭い一本道しか無いのだ。
気合いを入れ直して曲がり角の先に歩を進める。

その瞬間、一人の高齢者が足元に手を伸ばして何かを取ろうとしている光景が
目に飛び込んできた。

野球帽のような形の帽子をかぶり、狩猟の時に着るようなポケットの多いジャケットを
羽織ってゆったり目のズボンを身につけている。

足元を見ると長靴のような靴を履いていてそのつま先辺りに屈んで手を伸ばし、
何かを取ろうとしているのだ。

俺はびっくりした後、気を取り直し「あっ、こ、こんばんは!」と声をかけた。
顔の表情は帽子のツバの部分で全く見えない。

その高齢者は俺のかけた声に反応を示し、ゆっくりと体を起こし始めた。
そして顔が見えるかどうかというところまで立ち上がると、
ビデオの特殊効果を見ているように体が薄くなりはじめ、
フェードアウトしてしまったのだ…。

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bronco
Tags: ビデオ

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