Categories: 洒落怖

バッドトリップ

この怖い話は約 3 分で読めます。

676 3/5 sage New! 2011/05/01(日) 17:33:00.36 ID:BArBN8k60
その晩、夢を見た。体の中から全神経を引っ張られ、なかから圧縮される感じ。激痛が全身を走る。
肩、腕、指先に至るまで、体内から引っ張り込まれるようで、良く覚えてるのは、金玉がめちゃくちゃ痛かったこと。
言うなれば、飛び出ている部位が全部、亀みたいに引っ込もうとする感じ。
起きると眼の奥がじんじんと痛い。神経が震える感じがしていた。
ちょうどLSDの感覚に近い。ソワソワが止まらない。
確かに昨夜は神経で遊んでたけど、こんな経験はちょっとこれまでにない。
落ち着けない、落ち着けないことが怖く、ネタが混ぜ物だらけか、
体調の問題で最悪のバッドトリップだったかなどと思いながらふとWを見ると、熟睡している。深く考えず水を飲みまた一服すると眠れた。その時は、起きると悪夢のことはもう忘れていて、朝から疲弊した顔とギラつく目のまま、別れるおれたち。その後の話だ。

677 4/5 sage New! 2011/05/01(日) 17:36:06.83 ID:BArBN8k60
10ヶ月後。当然忘れていた頃。Wの姿を見なくなった。バイト先にも来ない。
結婚控えてるっていうか、もう子供も生まれるって時にだ。
おれだけが秘密のキメ友だったため、自宅を知っていた。
履歴書なんかで調べれば誰でも分かるんだけど、とにかくおれが様子を見に行く役回りになった。

練馬高野台駅。徒歩すぐ。エレベーターの無いマンション。
5階までまた息を切らしながら到達すると、玄関ドアに古びた封筒が貼ってあった。
5年は貼ってあるだろ、という程、黄ばんでシミもところどころ。
宅配便も郵便も誰も階段で5階まで上がってこない筈だ。普通は1階のボックスに置いていく。
これはおれに向けられたモノだと直感し、ドアから引き剥がすとすぐ階段を駆け下り、誰もいないフロアを通過し、マンションを飛び出た。
怖かった。
封筒を剥がすとき、隣の、屋上テラスへのドアの向こうで、ギシギシ、という何かが重く軋む音と、
例の魚と薬品が混ざったような匂いが漂っていた、気のせいか。
そして、そのドアがいつ向こうから開いて、何かが飛び出してこないとも限らない。
妄念に取り憑かれていた。当時のネタの副作用もあったんだと思う。

678 5/5 sage New! 2011/05/01(日) 17:40:01.82 ID:BArBN8k60
品川の自宅までの道のり、冷や汗と脂汗が止まらず、自宅に着いてすぐ封筒を開けた。
手紙が入っていた。手紙というよりも小説に近い分量の文字数だった。
びっしりと小さく細かい字で、虫が這うように。とても丁寧に書きこんである。
全てを書き写したいが、まだ様子を見たい。安全とは思えないから。
とりあえずかいつまんで話すと、Wもあの夜、すごい悪夢を見たらしい。
全身が中から引きずり込まれるような夢。
それもへその裏側から吸い込まれるような夢だという。
おれが帰った日、WはJの身重の恋人をひとりで待つも、Jが予定時刻を過ぎても帰ってこない。

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