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向こうは…201号室は空き室の筈だ。
じゃ、さっき彼女が見た、向こうから覗いていたというのは誰だ?
不動産屋か?近所に住むとかいう、ここの大家か?
カギを開けて少し窓を開き、その先を塞いでいるベニヤ板に触ってみる。少しタワんだ。
しっかり留められていない。内装も杜撰だ。ふざけるな。
向こうの住人がその気になれば、簡単にここから覗ける。
さっき彼女が見たという人影、たぶん大家が様子を見にきたのだろう。
ちゃんと打ち付けておけよ、この板。まあ、ここに住む気は無いが。
536 おいら ◆9rnB.qT3rc sage 2009/12/03(木) 21:36:28 ID:MnlKpsP80
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試しに、もう少しベニヤを押してみた。動く。三角形に開いた隙間から、201号室の奥、
床の様子が少しずつ見えてきた。
光が射さず、真っ茶色に変色して毛羽立った畳、それが縦に4畳ほど繋がっているようだ。
そこは超・細長い四畳半だった。
この隙間からはユニットバスにも、別の部屋にも繋がるようなドアは見えない。
家財道具も置いてあるようには見えなかった。
正真正銘の「ウナギの寝床」だ。人が住んでいる気配は…無いよな、空き室だし…
でも、この部屋と対称な間取りの201号室が、こんなに狭い筈が-
バァン!
ベニヤ板が、向こう側から思い切り叩かれた。もう少しで指を挟むところだった。
心臓が縮み上がったが、覗いてたこっちが悪かったかも。やっぱり大家かな?
「すいません、誰かそっちにいますか?…大家さん?」とノックした。
「ねえ、やばいよ」彼女が泣きそうな顔で、逃げの体勢になっている。
バァン!
凄い勢いでベニヤ板を叩き返してきた。この野郎。その窓を施錠して、部屋の外に出た。
すぐ隣の201号室の玄関のドアを叩いた。
「ちょっと!止めてくださいよ!怪しい者じゃないです!大家さんでしょ?」
「隣の202号室を見に来た者です!●●不動産の紹介で…」
バァン!バァン!まだ聞こえる。そいつは叩くのを止めない。おい、聞こえてないのか?
ドアノブを回した。玄関を入って201号室の中を見たとき、流石に凍り付いた。
537 おいら ◆9rnB.qT3rc sage 2009/12/03(木) 21:38:16 ID:MnlKpsP80
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確かに、202号室と対称に間取られた、ごく普通の部屋だった。
さっき見たような「ウナギの寝床」なんかではない。床も畳ではなくてフローリングだ。
誰もいない。室内を見まわした。大家はどこだ?
バァン!叩く音が止まらない。音の方を見ると、今まで居た202号室側の壁から
聞こえてくる。こちら側に貼ってあるはずのベニヤ板が無い。普通の白壁だった。
…さっき見た部屋は、この部屋じゃない。
201と202の間は壁一枚だけだ。
あの壁の間で、今もベニヤ板をバンバン叩いているのは…?