この怖い話は約 3 分で読めます。
だが、Kさんにお参りに行ってから体が軽くなり、京都滞在中に色々考えることがあったらしい。
あとで知ったそうだが、そのお城の城主の墓のある寺に、知らずに参拝していたんだそうだ。
それからNは、私を同行者にして、落城に関係のある史跡に一緒に行ったりした。
私に話した理由は、興味が似ていてかつ0感だから影響されにくそう、と思ったかららしい。
事情を聞いた私が「○○城には行かんでいいの?」ときくと、
Nは「まだ早いと思う…まだ自分には生々しいし、怖いから行きたない」と言った。
もし夢で見た山がお城の近くの山なのだとしたら、落城の前の戦で多くの民や負けた兵士が逃げ込んだ山なのだという。
Nは城跡にはまだ行ったことはなかったが、Nも私もその山には学校の遠足で行ったことがあった。
だが、実際にお地蔵さんがあったかどうかは、二人とも覚えてなかった。
「だって後で思ったけど、お地蔵さんて子供の守り神だよね。
もしお地蔵さんに気付かなくて、あのまま誘われて行ってたらどうなっとったんだろ、
もう二度と目覚めれんかったかもしれん。お地蔵さんに助けてもらったのかも」
前にも書いたように、そのお城では多くの女性や子供が犠牲になった。
特に若い女性たちが、敵兵に乱暴されるのを恐れて城にある崖から身を投げたのだという。
崖下には死に切れない女性達の悲鳴やうめき声が三日三晩続き、文字どおりの阿鼻叫喚。
しばらくは旅人達は交通の要所でもあるに関わらず、なるべくそこに近寄らなかったそうだ。
688 5/5 2009/11/06(金) 20:36:39 ID:YVT3dqap0
N自身の分析では、
「犠牲者のは自分達と同じような年頃の若い女性が多く、自分が書いているのはそんな中から生き残った一人の話。
犠牲者の中には、昔だから自分達と同じ年頃のまだ若い母親も多くいただろう。
そんな母親や、母親を求める子供とシンクロしてしまったのではないか」という。
Nは真面目な顔で言った。
「私はそういう女性を主人公にしながら、どっか現代の感覚で書いてたと思う。
戦の犠牲になった可哀相な女性達、という上から目線で。
それがきっと中途半端で相手の気に障ったのかもしれん。
いっそ書かないか、書くのならちゃんと掘り下げて相手の立場に立って、同じ目線で書かないかんかったんだ」
Nはその辺りから小説を書きなおした。
書いているあいだ、夜中に大勢の足音がしたり声が聞こえたり(だがデータは消えなかったそうだ)、
相変わらずの怪異は続いたそうだが、お守りをパソコンの上に置いて書き続けたという。
そして方向性が変わってから、怪異は徐々に治まっていった。
ついでに城主について書いた時にはまたちょっと怪異が活発化したそうで、
自分が山の中を逃げまどう夢や、山奥の庵でひっそりと落城関係者の菩提を弔う夢を見た。
だが、不思議と恐怖感はなかったそうだ。
結局、書き終える頃には、怪異はすっかり静まっていた。
予定よりはずいぶん違った話になったが、随分勉強になったらしい。
「こんな話を書かせたかったんかな」と書き終えてからNは思ったそうだ。