Categories: 洒落怖

この怖い話は約 3 分で読めます。

601 掟(1) sage 2009/08/15(土) 22:42:16 ID:a8gEKrqT0
よくある話ではあるけれど、私が知る一族の実話。

とても長い話になります。

瀬戸内海に面するあるところで、その地域ではやや名の知れた商家があった。
だが、なぜかそこは男の跡継ぎに恵まれなく、もし男が生まれても早死にし、他の家から
男の養子などもらって血を引き継ごうとするも短命で、ついに最後の跡取りも死に血が絶
えた。
一族はそこへ何の脈絡も無い血筋の、竹細工職人の少年を養子へ迎え、新たに家を建て直
そうとした。
養子の少年は、勤勉で懸命に商売にいそしみ、店は繁盛する。
少年は青年になり妻を娶るが、子に恵まれずに妻は早死にする。
再び妻を迎えるが、謎の変死。やはり子は生まれず。

そして、三番目の妻を迎えた。
その妻は、実家から持参した仏具を祭り信心する仏教の信仰が篤く美しい女だったが、か
なり気の強い面もあった。
養子の男は、気は強いが美しい妻に惚れていたので、好きなようにさせた。
三番目の妻は早死にすることもなく次々と六人の子を授かり、そのうち二人が男で養子の
男は跡取りが出来たことを喜んだ。
しかし、幸せはいつまでも続かなかった。

603 掟(2) sage 2009/08/15(土) 22:43:15 ID:a8gEKrqT0
養子の男は、子供達が幼いうちに病死した。主を失った店の使用人達は、ここぞとばかり
金品を持ち出して逃げ、豪商の面影は無くなり一族は落ちぶれた。
残された妻は信心深いこともあり、次々と悪いことが起きるのは何か良くない因縁などが
あるのではないかと思い、本土を離れたある地に神通力の強い僧がいる噂を聞きつけて家
へ招き、一人の壮年の僧が、一族の家へ来た。
僧がお経を唱え終わると、妻に言う。
「落ち武者の霊がいる。源平合戦の時代の落ち武者のようだ。ここは昔、戦の跡地ではな
いのか」
それを聞いた妻は、青ざめた。
ここ区域一帯は、古代の源平合戦の時、瀕死の落ち武者達が陸に上がり、多くがそこで命
絶えた場所であったからだ。
「多分、この土地で死んだと思われる落ち武者だろう。供養を受けたくて、この家に訴え
ている」
妻は早く祓ってほしいと言うが、僧は了承せず。
「祓うというのは、この幽霊を傷つけるということだ。
私は数多くの成仏できない霊を見てきたが、祓われた霊達はそれは多くの傷を魂に刻み込
んでいる。救われたいのに酷いことだ。あなたは仏教を信仰している。どうだろう、供養
してみてはどうか。善業を積むと思って。私もできるだけ助勢しよう」

604 掟(3) sage 2009/08/15(土) 22:43:58 ID:a8gEKrqT0
もともと信心深かったところのある妻は理解し、家の庭には落ち武者を供養する供養塔が
建てられた。
妻はお経をあげて落ち武者の霊を供養し続け、それ以来その一族にはさして悪いことは起
こらなくなった。

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