Categories: 洒落怖

この怖い話は約 3 分で読めます。

三番目の信心深い妻は、昔に老衰で亡くなったが、彼女は生前、何度も繰り返して子供達
に言い聞かせた。

「よく聞きな。家を建てかえたりしても、必ず供養塔は移し変えて供養を続けるんだよ。
幸せに平穏に暮らしたいのなら、そうしなさい。
世の中には、人間の頭の中で考えること以外の不可思議なことがあるんだ。
自分達の常識が、全てのことに通用するとは考えないほうがよい」

やがて瀬戸内海付近へ住む落ち武者の霊を供養する一族の家は新築されたが、亡き三番目
の妻の言いつけどうり、屋上へ供養塔を建てている。
一族が途絶えず栄えているのは、亡き三番目の妻のおかげであると誰もが認識し、言いつ
けを守っている。一族は安穏に暮らしている。
だが、なぜか生まれる子供は、男より女が圧倒的に多い傾向がある。

605 掟(4) sage 2009/08/15(土) 22:45:16 ID:a8gEKrqT0
同区域一帯は、商家の一族以外でも様々な悪いことが後を絶たず、その家々ではやはり供
養塔などを建て、子孫が供養を続けている。
迷信だと切り捨て、先代の言いつけを守らずに供養しない家は、不思議と商売が傾き破産
したり、病気や早死にするなど、次々と悪いことが起きている。
落ち武者の霊を供養することが、安泰の方法。
それが、瀬戸内海の穏やかな海が見える地域での、災いを避けるための掟。

この掟が維持できないときは、再び辺りは惨劇が訪れるだろうとされている。
だが人は安泰な日々が続くとそれが日常だと錯覚するふしがあり、この掟がいつまで維持
されるかは分からない。
でもその災いの元凶は、人自身が作ってしまった悪業。
これが私が知る一族の話。

この一族は、父の実家である本家の話です。
三番目の妻とは、父の母で私の祖母になります。
長い話のお付き合い、ありがとうございました。

606 掟(5) sage 2009/08/15(土) 22:47:32 ID:a8gEKrqT0
追伸

実は母の先祖は、落ち武者だったりします。
戦に負けて山中に逃げ込んだので、母の実家は山奥にあります。刀もまだ残っていたりす
る。
母の家系も男性の早死にが多く、跡取りが出来にくいという家系です。
奇妙にも似通った因縁家の血と血が混じり合い、一つに固く結びつく。
私は、これがただの偶然には思えません……。

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