Categories: 洒落怖

喜一

この怖い話は約 3 分で読めます。

721 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/08/16(日) 06:47:26 ID:11KLgdvXO
長くなるのに携帯からで、見難かったらスマヌ。
俺が小学生の頃だから、今から10年以上前の話だ。
その時、俺は家族でF県I市にある、母方のばあちゃんの家に泊まりに行ってた。
ばあちゃんちに行くと、俺と2つ上の兄はよく叔父が飼っている猟犬のダルメシアン(名前はコテツ)を借りて、山を探検していた。
コテツの首輪には発信器がついてたから、うちの両親もコテツが一緒なら大丈夫だろう、という感じで俺達を自由に遊ばせてくれていた。

そんな俺達が、絶対に近づくなと言われている場所があった。
ばあちゃんちから1~2キロぐらい離れていたところにある家だ。
その家はボロボロの平屋で、とても人が住んでいるようには見えなかった。

でも、人は住んでいた。

名前が喜一(漢字が合ってるかは分からない)という、70才くらいのアル中のジジイとその奥さんである老婆。
老婆は、たまにばあちゃんちに逃げてくることがあった。
酔った喜一が暴力を振るうみたいで、確かに老婆の目の上が大きく腫れ上がっていたのを覚えている。
それを、怒鳴り声をあげながらナタを持った喜一が探しに来たことがあった。
ばあちゃんは、「知らない」と軽く流して老婆を匿っていた。
そういった事があったから俺達は子ども心に、あの喜一というジジイが危ない人間である事、だから親や親戚は近づくなと言ってるんだという事を理解はしていた。

それでも、俺達はその言い付けを守っていなかった。
理由は喜一が二頭の山羊を飼っていたからだ。

722 本当にあった怖い名無し sage New! 2009/08/16(日) 06:48:43 ID:11KLgdvXO

小学生にとって山羊という生き物がどれ程興味をそそるかは言うに及ばないだろう。
紙を食べさせてみたり、ばあちゃんちの畑から適当に食べそうな野菜を持って行って、木でできた格子越しに山羊に与えたりした。

山羊の檻は庭にあって、喜一の家から20メートルぐらい離れていた。
物陰に隠れながら、こっそり山羊と触れ合う。
喜一に見つかるかもしれない、というスリルでまた楽しさが増した。
そしてその秋、俺達にとって一生のトラウマとなる事件が起こった。

また今回も、「山羊のところにいくぞ」と兄が言い、俺も賛同した。
両親や親戚には、裏山に行くと言い、コテツを連れて家を出た。
家を出て坂を下り、一度平坦な道に出てしばらく歩いた先で、また段々畑の脇道を上る。
秋でトンボが多くて、道の途中で振り返ると、黄金色の水田が段になって続いていて、美しい風景が広がっていた。

突然、コテツが吠えだし、もの凄い力でリードを振り払って駆け出した。

やばい!

道の真っ直ぐ先は喜一の家だ。
俺達は焦って、猛ダッシュでコテツを追いかけた。

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